2022年12月10日 / 最終更新日 : 2023年4月8日 times 松本肇短編小説 短編小説ショパンの調べ【4】 叔母が、一方的に奨めた見合いの日がやってきた。今までは、唯、断り続けていたのに、今回は相手と会うという事で、叔母は上機嫌だった。 見合いは叔母の家で行われた。静子は、普段着のワンピース姿で行こうと思っていたが、叔母からの […]
2022年12月3日 / 最終更新日 : 2022年12月29日 times 松本肇短編小説 短編小説ショパンの調べ【3】 日曜の朝10時を少し過ぎた頃、英雄はやって来た。静子の父も母も、妹の芳江も英雄に対して好意的で、二人の交際に対して、とやかく言う者は、誰も居なかった。 英雄の後ろについて、初めて相手の家に向かっている静子は、段々と不安に […]
2022年11月26日 / 最終更新日 : 2022年12月7日 times 因島三庄町 短編小説ショパンの調べ【2】 夜10時が近づくと、仕掛け花火が始まって、3時間程の花火の祭典は、終わる。 ナイヤガラの滝の仕掛け花火が、対岸の生名島に写しだされると、観衆からは口々に、溜息にも似た歓声が上がった。 帰りは、タクシー乗り場にも行列が出来 […]
2022年11月12日 / 最終更新日 : 2022年11月29日 times 松本肇短編小説 短編小説ショパンの調べ【1】 島が燃えているのかと、見間違える程の花火の競演だ。 国鉄尾道駅で下車し、連絡船に乗り換え1時間20分位の所に位置する、瀬戸内海に浮かぶ人口、約4万の因島では、毎年旧暦6月16日に「宮島さん」と呼ばれる花火大会が行われる。 […]
2022年11月5日 / 最終更新日 : 2022年11月15日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【14】最終回 千光寺山荘に着くと、健吾は麗香の肩を抱いて、フロントに向かった。 受付では、親子に見えるだろうか。それとも、許されぬ恋に見えるのだろうか。 あの時と、同じ部屋が空いているか訪ねた。宿泊者ノートを調べてくれていた受付嬢が、 […]
2022年10月29日 / 最終更新日 : 2022年11月7日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【13】 「あんただ!あんたのせいで、お嬢さ…イヤ麗香は変になったんだ。前の麗香さんに返してくれよ!」 健吾の顔を見るなり、辰也が一気にまくしたてた。 麗香からの連絡が途絶え、こちらから携帯や山荘へかけても、受話器を取る事はなかっ […]
2022年10月22日 / 最終更新日 : 2022年11月1日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【12】 麗香は三宮から神戸に行き、新神戸から新幹線で新尾道迄帰った。 丁度待っている尾道バスに乗り換え、因島土生港前で下車した。 そこに4、5台止まっているタクシーの、一番前の平和タクシーで、自宅を通り越し、山荘で降りた。 愛の […]
2022年10月8日 / 最終更新日 : 2022年10月19日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【11】 三宮の駅を降り、交差点を渡って西へ50メートル位戻った所に、健吾の店『アリス』はあった。30代も半ば位だろうか、女の従業員が接客している。 民芸品のバッグから靴、ミサンガ、ゴブラン織りのタペストリーなど、お洒落に置いてい […]
2022年10月1日 / 最終更新日 : 2022年10月11日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【10】 この髪をこの唇をこの頬を触れし人よ君は神戸に 健吾さんに会いたい、何も話さなくてもいい、じっと傍に居るだけで幸せなのに、昨日別れたばかりなのに、何故か胸がしめつけられる。イーゼルを立て、キャンバスを置いても、絵筆が思うよ […]
2022年9月24日 / 最終更新日 : 2022年10月3日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【9】 5分もしない内に、千光寺山ロープウェイ山頂駅に着いた。文学の小道を歩きながら行くと、志賀直哉の暗夜行路の一節や、林芙美子の放浪記の一節を彫った石碑が並んでいる。朱塗りの本堂のある、千光寺の境内の椅子にはヒ毛氈が敷かれ、お […]
2022年9月17日 / 最終更新日 : 2022年10月3日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【8】茶房こもん 芙美子像を左に見ながら、車は駅前のしまなみ交流館にある駐車場に止めた。 バスターミナルに行くと、赤と緑のツートンカラーのレトロなバスが止まっていた。好きっぷラインといって、観光地近くのバス停を巡回してくれるという。健吾と […]
2022年9月10日 / 最終更新日 : 2022年10月3日 times 因島大浜町 短編小説ユトリロの街【7】因島大橋 白滝山の山頂で、360度瀬戸内の見渡せるパノラマで、健吾と四国山脈を見た日から、1ヶ月程たった3月も終わりに近い土曜日、麗香は健吾の運転する車に乗り、尾道へと向かっていた。 青影トンネルを抜け、因島インターチェンジを過ぎ […]
2022年9月3日 / 最終更新日 : 2022年9月12日 times 因島重井町 短編小説ユトリロの街【6】恋し岩 福山大学マリンバイオセンターを右に、大浜を通り過ぎ、白滝フラワーラインを登って、途中の駐車場で車を止めた。 細い山道を、五百羅漢を見ながら登っていると、観音堂があり、恋し岩という岩が奉られていた=写真。 昔、重井(しげい […]
2022年8月27日 / 最終更新日 : 2022年9月8日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【5】 シルバーのメルセデス・ベンツが、釜の浜を左に走って来る。 「健吾さんだ、健吾さんの車がやって来た。」 ユトリロ展で別れて、一週間程たったある日、教えていた携帯電話に、健吾から連絡があった。 尾道大学の美術学科3年の麗香は […]
2022年8月13日 / 最終更新日 : 2022年8月24日 times 因島市民会館 短編小説ユトリロの街【4】 一通り見て回った後、3人で因島市民会館を後にした。さっき車を置いた、芸予文化情報センターの駐車場へ行くと 「辰也さん、先に帰ってて」 わざと言ったにしろ、突然麗香が自分の名前を呼んだので、辰也は顔を赤くし、鳩が豆鉄砲を食 […]
2022年8月6日 / 最終更新日 : 2022年8月15日 times 因島市民会館 短編小説ユトリロの街【3】 初日という事もあってか、因島市民会館の場内は結構混んでいて、30人位の人達が静かに鑑賞していた。 『サンノアの通り』『コタン小路』『オルシャン街』…と見ていっている内に、さっきから足を止め、一点に見入っている、50歳前後 […]
2022年7月30日 / 最終更新日 : 2022年8月11日 times 因島市民会館 短編小説ユトリロの街【2】 中2階にあるロフトから、急いで階下に降りて行くと、受話器をとった。 「佐伯?すぐに来て頂戴、急いでネ」 「ハイ、かしこまりましたお嬢様」 佐伯辰也は、麗香より5才年上なので、今年25歳になる筈だ。 父の氷室剛造が、因島で […]
2022年7月23日 / 最終更新日 : 2022年7月31日 times 松本肇短編小説 短編小説ユトリロの街【1】 麗香は風のささやきを、聞いたような気がした。それはサワサワと、時には強く時には弱く心地よく耳に響いていた。眠っているでもなく、又、起きているのでもなく、いわば半寝の状態が麗香の一番好きな時だ。 サイドテーブルの上に置いて […]
2022年7月23日 / 最終更新日 : 2022年7月31日 times 松本肇短編小説 新連載「ユトリロの街」筆者・松本肇さん(因島三庄町) 今号から新連載「短編小説ユトリロの街」が始まる。 この作品は、因島三庄町在住の松本肇さんが昨年1月自費出版した同名の短編小説集に収録されている7編のうちの一つである。松本さんは「コロナ禍でみな不自由さ、困難さを抱えている […]
2022年3月26日 / 最終更新日 : 2022年11月15日 times 本・書籍・カレンダー 童話集「海のカメリア」出版 松本肇さん(因島三庄町) 因島三庄町在住の松本肇さんが1月26日、小説「ユトリロの街」に続いて童話集「海のカメリア」を自費出版した。「子どものから大人まで楽しんでください」という。9編のオリジナル童話で構成、全66頁。定価800円。ギャラリー喫茶 […]
2021年6月19日 / 最終更新日 : 2023年12月6日 times people 短編小説集「ユトリロの街」出版 松本肇さん(因島三庄町) 因島三庄町在住の松本肇さん(76)は1月、短編小説集「ユトリロの街」を自費出版した。会員制交流サイト(SNS)のFacebookで1年間連載した7編をまとめたもの。 「コロナ禍でみな不自由さ、困難さを抱えている。この世の […]