短編小説ユトリロの街【14】最終回

千光寺山荘に着くと、健吾は麗香の肩を抱いて、フロントに向かった。

受付では、親子に見えるだろうか。それとも、許されぬ恋に見えるのだろうか。

あの時と、同じ部屋が空いているか訪ねた。宿泊者ノートを調べてくれていた受付嬢が、運良く空いていると答えた。

案内しようとするのを断り、部屋に向かった。ドアを開けると、一ヶ月前と同じ空気が、そこにあった。

ここで麗香と二人だけの時を持った、暮れなずむ夕焼けも、対岸の向島に、星を散りばめた様にチカチカと光る街の明かりも、何も変わっていなかった。

変わっているのは、麗香と自分だけなのかと、健吾は思った。麗香の心を痛め、傷つけてしまった。決して、遊びのつもりでの、軽はずみな行為ではなかったのだ。

「麗香、麗香」

健吾は麗香を抱きしめた。

「健吾さん…」

細いがハッキリとした声で、麗香が答えた。神の力か、愛の力か、健吾はあの時のあの瞬間を再現していくうちに、麗香が記憶を取り戻したと思った。向島を挟む尾道水道に、雲の合間から、太陽の光が一筋射していた。(終)

松本肇(因島三庄町)

次号からは、引き続き松本肇さんの短編小説「ショパンの調べ」を連載します。

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