因島で見た野鳥【148】鳥の呼吸システム

酸素が少ない1万メートル近い上空を飛び続ける渡鳥がいる。酸欠にならないのか?海面近くを休むことなく飛び続ける海鳥がいる。息切れしないのか?たびたびこのように問われるし、筆者も不思議に思うので、門外漢であることを顧みず、鳥の呼吸システムを調べた。

哺乳類は、袋状の肺に空気を入れ酸素を体に取り入れる。成人の平均的な肺の容積は左右合わせて約6リットル、一回の呼吸で交換する空気量は0.5リットル程度である。したがって酸素が減少した古い空気と少量の新鮮な空気が混ぜ合わさった状態で酸素を血管に取り込んでおり、効率が悪い。鳥類の肺では、古い空気と新鮮な空気は混ざらず、常に新鮮な空気から酸素を取り込む高効率のシステムになっている。その概略を、「哺乳類と鳥類の生理学」(W.O.Reece、鈴木勝士監修、学窓社、2011)を参考にして述べる。

鳥には、肺以外に、空気で満たされる袋状の気嚢(きのう)が多数あり、肺の前方にある複数の気嚢を前気嚢群、後方にある複数の気嚢を後気嚢群と呼ぶ。図①②に、呼吸器の模式図と呼吸時の空気の流れを示した。実線が新しい空気の流れ、破線が古い空気の流れを表している。まだら模様の太い線は毛細血管の集まりで、破線で囲った長方形の部分が肺で、ここで空気から酸素を取り込む。

図①は、吸気(吸息)の空気の流れで、気管からの新しい空気は、膨張する後気嚢群と肺に流入し、肺に流入した新しい空気で追い出された古い空気は、膨張する前気嚢群に取り込まれる。

次の排気(呼気)では、図②に示すように、後気嚢群と前気嚢群が縮小し、後気嚢群から新しい空気が肺に流入し、押し出された古い空気と前気嚢群の古い空気が気管を経て体外に排出される。

鳥の呼吸全過程で、新しい空気が、古い空気と混ざることがなく肺に供給され、効率的に酸素を取り込むことができる。これが酸欠にならない理由の一つである。

最近の研究では、現生鳥類の祖先と考えられている獣脚類恐竜も気嚢を持っていることが明らかになっている。約1億5千万年前のジュラ紀には、酸素濃度は現在の酸素濃度の約半分であった(「恐竜はなぜ鳥に進化したか」P.D.Ward著、垂木雄二訳、文藝春秋、2010)。

この時代に獣脚類恐竜は他の恐竜と共に繁栄し、鳥類が獣脚類の一つとして進化したとする説が有力で、鳥類の気嚢システムは、低酸素濃度の環境への適応とも考えられている。気嚢システムは、我々が壮大な地球史に思いを馳せる契機にもなる。

なお、鳥の呼吸は2回の呼吸(呼息・吸息・呼息・吸息)で1サイクルとなるが、肺を空気が一方向に流れることを簡潔に示すために、正確さを犠牲にして、呼息・吸息の1サイクルで説明した。(8月20日・記)

写真・文 松浦興一

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