因島で見た野鳥【68】アトリ

スズメ目アトリ科。全長16cmで、スズメよりやや大きく、冬鳥としてシベリア方面から日本海を経て渡来する。因島で見るのは冬羽で、頭は灰褐色、喉から胸は橙色で腹部は白く、翼は黒い。アトリ科の大きな嘴は、強力な破壊力があり固い種子を砕くことができる(ギル:鳥類学)。渡来数は年によって異なるが、何万羽という大群で移動することがある。集まって来る鳥「あっとり」から「アトリ」と言われたとの説がある。因島で見たときも、群れをなして木の実を食べ尽くして去っていった。

奈良時代から「あとり」としてよく知られた鳥で、日本書紀にも、大群で空を覆って飛んで行った様子が書いてあるとのこと。万葉集に、駿河の国から筑紫に派遣された防人・刑部(おさかべ)虫麻呂の歌がある。”“国巡(めぐ)る あとりがまけり 行き廻(めぐ)り 帰(かひ)り来(く)までに 斎(いは)ひて待たね” 国をめぐるアトリのように行きめぐって帰って来るまで、潔斎して待っていてください(武田祐吉:万葉集全講)。潔斎とは、身を清める沐浴の事。自由に飛び交い視界から消えていったアトリの群れを見て、故郷に残している愛しき人に想いを馳せたのであろう。

さて、連載(67)で、大移動を繰り返している鳥以外の動物について述べたが、やはり鳥の渡りはすごい。北極圏と南極圏を行き来するキョクアジサシ、ヒマラヤ山脈を超えて渡るアネハズルやインドガン、連載(46)で述べた高度3千メートル上空を、8日間アラスカからニュージーランドへ1万2千キロメートルを無着陸で渡るオオソリハシシギ等には驚く。体型がスズメ目ツバメ科のツバメに似ているが、ツバメとは遠縁のアマツバメ目アマツバメ科の一種ヨーロッパアマツバメでは、繁殖期を除く10ヶ月間を全く無着陸で飛行し続けた個体が確認されている。

アマツバメもツバメと同じように、飛びながら昆虫を捕食する。このように、系統が全く異なるのに、生態が似ていると似た形質になることを収斂進化(しゅうれんしんか)という。反対に、同じ祖先から異なった環境などに適応して、多様な種が生まれることを適応放散という。

(写真・文 松浦興一)

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