ふるさとの史跡をたずねて【366】不動明王(尾道市因島重井町白滝山)

不動明王(尾道市因島重井町白滝山)

初代慈母観音から大岩の面を左の方に目を転じると、さらに迫力のある不動明王が目に入る。細かい細工と躍動感に溢れたその姿は、多宝塔の載る大岩に掘られた他の作品を圧倒している=写真㊦。不動明王の足元には「石工太兵衛」と彫られている。

白滝山中腹の仁王像、善興寺の仁王像も同じ作者の作品であるから、太兵衛が抜群の技術を持った石工であったことがわかる。また、白滝山五百羅漢建設のために集まった10人前後の石工のトップとして、太兵衛の果たした役割が決して小さなものでなかったことも容易にわかるだろう。

山頂の岩を使った工事であったから、最初から完璧な設計図があったわけではなかったし、ありえないことであろう。工事責任者で雇用者側である林蔵が描いた全体のプランは、一部が完成すると共に再検討されながら進められたに違いない。その相談相手が石工頭太兵衛であった。時には実際に作業を行う他の石工たちの意見も聞きながら、少しずつ作られていった。

そして何よりも特筆すべきは、この三者の関係が極めて良好なものであったことだろう。そうでなければ、大小さまざまな石造物が3年あまりで作られるということはありえない。

さて、ここに不動明王像があるということは何を意味するのであろうか。白滝山の石仏群は羅漢信仰と観音信仰を合わせたものであって、修験道の道場ではない。だから不動明王が中心にくる必要はなく、またそうあるのはおかしい。ただ、この山が修験道の修行場であったという過去の歴史を考えれば、その記念にもなる。そのような考えの妥協点がこの大きさではないかと、私は思う。すなわちこれ以上大きくなると、観音霊場には不釣り合いとなる。

写真・文 柏原林造

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