ふるさとの史跡をたずねて【412】伝六⑫袁了凡その2

伝六⑫袁了凡その2

袁了凡の『陰騭録』の翻訳本は伝六の時代のみならず、明治、昭和の時代にも出版された。現在では、石川梅次郎『陰騭録』、明徳出版、中国古典新書、に原文、翻訳を解説とともに見ることができる。天が陰ながらこの世のことを定め(騭)た法則を、人間が変えていこうという考え方である。その手段が善行である。儒教、仏教ともに道徳的要素は多い。しかしそれらは儒者や僧侶を対象にしたものでやや高踏的である。それが民間習俗と関わりの深い道教と融合することで、より庶民的な道徳ができた。その一つが功過格(功過自知録)であると言える。

熱心な観音信仰の信者であった伝六が注目したのは、この辺りの事情ではなかったかと思われる。

袁了凡は自分の運命は決まっているという消極的な運命論者であった。それが、自分の運命は変えられるという積極的な運命論者に変わる。功過格によって善行を積むことで運命を変えることができると実証されたので、それを自分の子供に伝えるために書いたと言う。

結論を言えば、善行により自分の運命を切り開くことができると言うわけである。言い換えれば、「積善の家には余慶あり」と言われる。これは宗教的な努力が社会的に成功する、と飛躍させても良いだろう。

ここで私はアメリカのB.フランクリンを思い出す。あの雷雨の中で凧を揚げて雷が電気だと証明した人である。時は金なり、の禁欲・勤勉はプロテスタントに由来し、初期資本主義社会の理念に合致したと、ドイツの社会学者が指摘した。

伝六が広めたこの運動は、我が国の農村社会においても小作農から自作農へ変わり、あるいは明治になってから商品経済が押し寄せる中で、自らを律するものが富めると言う、今なら当たり前のような考えを育てる素因になったことだと思われる。

間違ってならないのは、新しい時代にあった道徳を作ったのではなく、庶民道徳が新しい時代の生き方を支えたわけである。

さて、石川梅次郎氏が「あとがき」で「昔は大変よく読まれたが、今日はあまり読まれない本がある。陰騭録もその一つである」と書いてあるように、忘れられた書物である。が、安岡正篤、「立命の書『陰騭録』を読む」、竹井出版、が出版されているように、知っている人もいるのである。

写真・文 柏原林造

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