因島で見た野鳥【176】ホオジロ尾羽再生中
2024年秋の観察だが、写真①の尾羽が短いホオジロ・メスがいた。

写真①ホオジロ・メス尾羽再生中
参考のために、通常見るホオジロ・メスを写真②に示す。

写真②通常見るホオジロ・メス
正確には分からないが、写真①のホオジロの尾羽は、通常のホオジロの尾羽のほぼ半分の長さにみえる。
オオジュリン、ホオジロ、カシラダカ、アオジ等のホオジロ科の鳥について、尾羽の異常の形態と出現頻度を調べた研究(富田直樹他、日本鳥学会誌62巻143頁、2013年)によると、異常の形態は三つある。それらは、12枚ある尾羽の一部に虫食い状の欠損が斑点状にある「虫食い欠損型」と、羽の一部が正常値より短いあるいは長くて左右非対称の「成長異常型」、さらに、欠損と成長異常の二つの異常を併せ持つ「複合型」の三つである。この論文では、種別に、捕獲場所・異常形態ごとに出現頻度が表にまとめられており、オオジュリンでは出現頻度が他の種より多い。筆者が総数を集計して求めると、捕獲総数7018羽のうち尾羽が異常であった総数は486羽(約7%)である。
このように尾羽の異常は、かなり高い頻度で出現することが分かるが、これらの異常は、写真①に示すような尾羽全体が一様に短い異常とは異なる。本連載123回、158回で、捕食者などからの危機を脱するために、「トカゲの尻尾切り」のように、「恐怖性脱羽(フランク・B・ギル、鳥類学、新潮社、2012年、110頁)」で尾羽を抜いたと思えるホオジロとジョウビタキについて報告した。本稿の写真①のホオジロも、何らかの危機に遭遇し恐怖性脱羽した後で、尾羽が再生している途中と思われる。現在では、本連載159回のジョウビタキの例のように、無事再生しているかもしれない。
恐怖性脱羽は極めて稀なことと、根拠もなく想像していたが、自然界は命をかけた闘いの連続であり、被捕食者は危機を脱するための多様な術を持っていると、あらためて思い直した。オキアミは、魚やペンギンに襲われたとき、突然脱皮して殻を残して危機を脱することがあるそうである(アシュリー・ウォード、動物のひみつ、ダイヤモンド社、2024年、43頁)。
源氏物語第3帖「空蝉(うつせみ)」では、光源氏の来訪を受けた空蝉が、我が身と光源氏の「めぐりあわせ」の違いから光源氏の愛を受け入れるべきではないと考え、薄衣を残して去っていった。まったく、恐怖性脱羽とは関係のない話であるが、頭をよぎった。
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