因島で見た野鳥【158】ジョウビタキ尾羽を失う

写真①は、縄張り近くに来た別のジョウビタキを威嚇したジョウビタキ・メスである。

どこか違和感があるので、しばらく観察していると、写真②のように尾羽が脱落していることがわかった。

1月29日のことである。

本連載【123】ホオジロ尾羽が無い」で紹介したが、鳥は危機に襲われると、尾羽を抜いて危機を脱することがある。これを恐怖性脱羽(フランク・B・ギル:鳥類学110頁では「恐怖性脱毛」と訳されている)という。

写真①のジョウビタキは、何らかの危機を脱するために尾羽を失ったのであろう。この状態で、縄張りへの侵入者を追い払うことはできるようであるが、「本連載【63】ジョウビタキ」で紹介したように、日本海を800km一気に飛んで来た例もあり、春には、日本海を横断して北の生まれ故郷に帰らねばならないので、尾羽は「欲しい!」。

鳥の羽は、人の髪や爪と同様に血液が来ない死んだ組織なので、傷ついても修復はできず、新しい羽に交換しなければならない。そのために、鳥は定期的に、多くの場合、年に2回、換羽する。

本連載でカルガモ【113】ヒドリガモ【120】とマガモの風切(羽)【121】【122】の換羽の観察結果を紹介した。この場合には、あらかじめ予定された換羽で、新しい羽が皮下に成長し、それが古い羽を押し出して換羽するので、古い羽が脱落した時には新しく成長した羽が皮膚の表面に出ている。これらの観察では、脱羽してから1ヶ月程度で、風切羽の成長が完了しているようである。

恐怖性脱羽は、突然の脱羽なので、新しい羽根は準備されておらず、再生に必要な期間を知るために観察を続けた。

 

図①は、前回【157】の写真①に主な寸法を付け加えたものである。

鳥を仰向けにして軽く伸ばした状態の嘴から尾羽の先までの長さを全長という。嘴の先端を通り体の中心線に対して垂直な直線Aと尾羽の先端を通る直線Dの間の距離は、ほぼ全長に近いとして、ジョウビタキの全長14cmと表記した。尾羽の長さは、6.6cm(笹川昭雄:羽根図鑑、世界文化社)である。

尾羽の生え際は上尾筒に覆われているので正確には不明であるが、三列風切のT1の先端よりやや頭側にあるとして、そこを通る直線Bと直線Dの間を尾羽の長さとした。翼の後端(翼を開いたときの初列風切の先端)を通る直線Cと直線Dの間が4.4cm程度となる。

ジョウビタキが尾羽を失った日は、正確には分からないが、初めて見た1月29日を起点にして再生の様子を述べる。尾羽を失って14日経過した2月12日にやっと尾羽の先端らしきものが見えてきた。

写真③は2月17日(19日経過)の写真で、尾羽の先端が、直線C近くまで伸びているが、尾羽中央の黒い羽は未だ見えない。

文・写真 松浦興一

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