短編小説ショパンの調べ【4】

叔母が、一方的に奨めた見合いの日がやってきた。今までは、唯、断り続けていたのに、今回は相手と会うという事で、叔母は上機嫌だった。

見合いは叔母の家で行われた。静子は、普段着のワンピース姿で行こうと思っていたが、叔母からの、強い申し立てで、淡いピンクの小紋を着ていた。

八帖の客間に入ると床には高砂の掛け軸が掛けられていた。飾り棚に置かれている、柿エ門や赤楽も、叔母の自慢の茶道具の一つだ。

「静子、こちらが日下(くさか)拓也さんよ」

見合いの相手は、山口市の道場門前町で、洋品店を経営している32歳の青年だった。流石に洋品店を経営しているだけあって、背広の趣味といい、ネクタイ、ワイシャツの配色もセンス良くて、ちょっと、気障な感じを受ける程だった。

お互いに、経歴や趣味、家族構成など、釣書に書いたのと同様な内容を、話し合った。時折、庭でシシオドシの音が軽やかに、響いていた。

「静ちゃん、いい相手だっただろう。あの若さで、経営者だよ。収入も安定しているし、サラリーマンの奥さんになるより、ずっと幸せだと思うよ。向こうも大層気に入ったみたいで、もし良ければまた会いたいと、言ってきているんだよ」

湯浅英雄と日下拓也を比べてみると、誰もが日下拓也を望むだろう。だけど幸せというのは、損と得とを計りにかけて、割り切れるものではない。心の問題だと、静子は思った。出来れば、何もかも捨てて、英雄の胸の中に飛び込んでいきたい。英雄と付き合い初めて、自分はこの人と結婚するのだと、何時しか静子は決めていた。別に何も話をしなくても、二人でいるだけで、幸せだった。いくら、貧しい暮らしをしても、苦労をしても、英雄との生活であれば耐えられる筈だ。だが、静子のそんな強い思いとは裏腹に、今運命が変わろうとしていた。

松本肇(因島三庄町)

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