因島で見た野鳥【142】羽毛の色と構造色その2

写真①は羽を広げているカルガモである。

写真①カルガモの翼鏡

点線で囲った四辺形の領域は、次列風切(羽)の「翼鏡」と呼ばれる部分で、あざやかに輝き、写真の場合には左側が水色に近く右側は藍色に近い。左右の羽に含まれる色素は同じだが、光線の角度が異なるため、異なった色に見える。これが構造色の特徴である。この翼鏡は、緑色に見えたり紫色に見えることもある。翼鏡以外の部分は、濃淡の差はあるが茶色系で、主としてメラニン色素による太陽光の反射によるもので、翼鏡とは違い光の方向による色の変化はない。

一般に、光の波長程度の長さの間隔で規則的に並ぶ構造を持つ場合には、条件によって特定の波長の光が強く反射される現象が起こる。簡単な例を図①に示す。

反射面が規則的に重なり、その面間隔が可視光の波長程度だとする。太陽光は平行光線として反射面に当たり、鏡面反射する反射光について考える。反射面2の反射光は反射面1の反射光よりA’O’間とO’A’間だけ行程が長くなっている。この行程が光の波長の長さと同じになると、二つの反射光は波の山が重なり光が強まる。この場合、反射面のあらゆる点での反射光線は互いに波の山は重なり強め合い、その波長の色に見える。これが構造色の反射光の例である。

図②に構造色の模式的なスペクトルと、前回「その1」の図②で示した色素(緑色の葉)による反射光スペクトルを示す。

構造色は幅の狭い高い山状のスペクトルで、鮮やかで輝いたような色に見える。しかも、このピークの波長(色)は入射角の大きさで変化する。図②の破線のピークは、角度によって反射光の波長が移動した様子を模式的に示している。これが、写真①で示したカルガモの翼鏡の色が左右で異なっている理由である。

カワセミの背などが、我々がよく目にする構造色の例であるが、羽のどの微細構造が構造色に関わっているのかは、よく分かっていないこともあるようである。カワセミの青色が構造色と明らかになったのは、20年ほど前である。カワセミやインコの青色や水色の部分には、電子顕微鏡で観察しても規則性のある構造が見られないので、レーリー散乱(ごく微小な粒子の集まりでは、波長が短いほどよく散乱されるので、青色が目立つ散乱)と考えられていた。ところが、1998年にR.O.Prumらが、その電子顕微鏡による像をフーリエ解析(規則性を数学的に見つけ出す手法)すると、狭い範囲ではあるが規則的な構造を持っていることが明らかになり(Nature 1998年)、構造色であることが明らかになった。現在では、動物の色で光散乱により発色しているものはほとんどないと考えられている。
(木下:日本画像学会誌 vol.50,No.6,pp.543-555,2011)

因島で見た鳥で構造色が目立つのは、カモ類の翼鏡、頭部や首、キジ・オスの頭部や首の部分、カワセミの背などである。いろいろの方向からの光を浴びる日陰では目立たないが、強い直射日光では、カラスが紫色を帯びることがある。これも構造色と思われる。甲虫、蝶、熱帯魚などにも構造色が観測される。構造色は、生物にとって普遍的な発色機構の一つと考えられる。(6月11日・記)

文・写真 松浦興一

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