因島で見た野鳥【111】バンの子育て③
バンの子育て③
親鳥は、ヒナの一部を池で子育てし、残りのヒナを水路を伝って溝に連れて行っている。その一例が、7月25日撮影した写真①である。孵化して3週間程度経過しているヒナの羽衣は黒いが、やや茶色味を帯びてきている。
親鳥は、ヒナを育てながら、新しい巣を作り始め、7月30日には、2回目(※注)の抱卵を始めた。抱卵していない方の親鳥は、ヒナに付き添って子育てを続ける。
写真②(8月11日撮影)は、溝にいた3羽のヒナと親鳥。孵化後おおよそ6週間ほど経過しているが、ヒナは黒い産毛から茶色がかった羽衣に変わり、赤色だったクチバシは黄色みを帯びている。
(※注)観測を始めた時には、すでに初回の繁殖を終わり、一番子のヒナは2回目の繁殖かもしれないが、ここでは、1回目の繁殖として述べる。
8月20日には、新しいヒナが孵化を始め、8月24日には新しいヒナが6羽となる。ここで、6月28日から7月4日に孵化したヒナたちを一番子、8月20~24日に孵化したヒナたちを二番子と呼ぶことにする。
二番子が生まれると、親鳥は一番子の面倒は見ないが、一番子が巣に近寄るのは受け入れている。
写真③は、その様子で、二番子への親鳥の給餌を2羽の一番子が眺めている。
親鳥が二番子を餌場に連れて行くと、一番子も一緒に移動し、遅れるヒナをガードするように、最後尾について行く(写真④)。
親鳥が巣に二番子を残して留守をするときには、一番子が二番子を見守る様子も見られる。あたかも、一番子が育雛を手伝っているように見え、ヘルパーと呼ばれることもある。
親鳥は、一番子に餌を与えることはない。二番子に与えようとしたトンボを横取りしようとした一番子を、親鳥は激しく攻撃した(写真⑤8月23日撮影)。
この時、一番子は堤防の上まで飛んで逃げたが、またすぐ、巣近くの親鳥のそばに戻った。
やがて、一番子は、少しづつ、単独で行動することが多くなり、数も減っていった。池から出て独立したのであろう。一番子を最後に見たのは、孵化後約2ヶ月経過した9月2日である。10月4日に、別の池で若鳥を見た(写真⑥)。
クチバシは黄色で、頭・首は灰色である。池を出た一番子とは限らないが、一番子もこのような姿だろう。次の春には、本連載【109】バンの子育て①の写真①のような羽衣になり、伴侶を得て子育てに挑む。
文・写真 松浦興一
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