ふるさとの史跡をたずねて【406】伝六⑥功過自知録刊行本

伝六⑥功過自知録刊行本

さて、写真①をご覧いただきたい。

写真①

前回のものが手元にあれば比べてもらいたい。多少の細部の違いがあるものの、ほぼ同じようなものだと了解していただけたと思う。

今回示したものは、私が古書店から求めたもので伝六とは全く関係がない。江戸時代に刊行されたもので、安永5年の原刻、寛政12年の再刻と記されている。

結論から言うと、前回あたかも伝六のオリジナルな著作のような印象を受けたと思うが、そうではなく刊行本(市販本)を写したものだということがわかる。もちろん多少の異動のある多数の版が刊行されたのであろうから、伝六が見たものと全く同じであるということはありえないだろう。

しかし、伝六が持っていたものか、伝六が写して持っていたものを弟子の好善法師が写したものであったのだから、伝六の思想に近づくには誠に格好の資料と考えてよいだろう。

原本の著者や時代背景については追い追い考察していくとして、今回は好善法師本にはないが、刊行本の末尾4ページに渡って書かれている表を紹介しておこう=写真②③

1日の善と過の数を記す1年分の表である。すなわち、この功過自知録というのは道徳の点数化でありその実践の手引き書であるということがわかる。

九州日田(現大分県日田市)の広瀬淡窓は、善から過を引いた数を日々加算して、1万点を目指して、その記録簿を「万善簿」と呼んだのである。伝六が何と呼んだのかはわからない。

だが同じ時代を生きた二人である。

九州の物流の中心地、天領日田の漢学者広瀬淡窓(1782年生まれ)と同じようなものを、広島藩の端の端の離島の農村で伝六(1781年生まれ)が読んでいたということは、やはり驚嘆に値する。

写真・文 柏原林造

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