因島で見た野鳥【156】マミチャジナイ
初めて「マミチャジナイ」と聞いて、どんな野鳥か想像できる人は少ないであろう。オスの全身がほぼ黒く、白い眉斑が目立つマミジロ(眉白)と呼ばれているツグミに似た体型の鳥がいる。
眉斑(びはん)=鳥の目の上にある眉(まゆ)のように見える線のこと。
「鳥名由来辞典」によると、マミジロは、江戸時代に「まみしろしない(しない=ツグミの古語)」とも呼ばれていた。
ツグミ類に、全身が黒ではなく茶色で、白い眉斑が目立つ種がおり、これを、本来、「まみしろ・ちゃ・じない」というべきところを、「まみちゃじない」となったのであろうとのことである。
写真①が因島で初見の「マミチャジナイ」で、写真②は羽を広げた様子である。
マミチャジナイは、ツグミ【本連載64】やシロハラ【本連載66】と共にツグミ属の一種で、全長21.5cm、シロハラよりやや小さい。下面は淡い橙赤色である。羽を広げてもほぼ一様に茶色で、雨覆に白斑がある(写真②)。
体型がシロハラ、ツグミ、アカハラに似ているが、シロハラの下面は白っぽく、ツグミの下面には明瞭な黒斑がある。アカハラ(因島ではまだ見ていない)の下面は赤っぽいが、眉斑が目立たない。
鳥類の越冬分布を調べるために全国約2,300地点で調査しているBird Atlasの2016~2020年間の記録によると、シロハラを見た地点数は約380、マミチャジナイを見た地点数は8である。これらの地点数は個体の生息数ではないが、生息数の相対的な多さを表している。冬季の因島でよく見るシロハラに比べ、マミチャジナイを見るのが稀であることがわかる。
マミチャジナイの繁殖地は中国東北部やシベリヤで、越冬地はインドネシア、フィリピン、ミクロネシアなどである。日本では、少数が越冬するが、主に旅鳥として現れ、冬鳥のツグミやシロハラの群れに混じっていることが多いとされている。因島で見たマミチャジナイは、1月末からおおよそ1週間ほどシロハラやツグミの群れの中にいた。
国際自然保護連合(IUCN)によると、日本で越冬するマミチャジナイの個体数は50~1,000羽、旅鳥として通過するのは50~100,000羽で、世界的な生息数は正確にはわからないが、減少している兆候はないとのことである。(3月22日・記)
文・写真 松浦興一
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