ふるさとの史跡をたずねて【150】草深山稲荷神社(因島三庄町三区)

草深山稲荷神社(因島三庄町三区)

今では祭神はおキツネさまだと多くの人が思っている、陶器の白いキツネと赤い鳥居で有名な稲荷神社に、なぜ稲の字が入っているのかという疑問は、元々の祭神は穀物神の宇迦之御魂(ウカノミタマ)であったと書けば納得されることと思う。それならば、おキツネさんは俗説かと言うと、そうではなく、長い歴史を持つ民間信仰である。ただ、本来の祭神ではないが。

その歴史は長く複雑である。初めは秦氏の氏神であり、農耕や養蚕の神として祀っていた。それを空海が東寺(教王護国寺)を建てたときに守護神としたので、真言密教と習合するとともに広く信仰されるようになった。時代とともに神様のキャパシティ(守備範囲、正確には神格)も殖産興業、商業と広がり、屋敷神も兼ねているのだから、その人気は留まるところを知らない。

統計上も神社総数は多いが、それには載らない邸内祠でもお稲荷さんの人気は高いから、庶民信仰の雄であろう。邸内祠、すなわち個人の屋敷内で祀るのは江戸時代、田沼意次が家に祀りどんどん出世したので庶民に広まったという説がある。白い陶器と木製の赤い鳥居で稲荷神社ができるのだから安い投資である。私も岡山の高松稲荷にお参りしたとき、おキツネさまを買って帰ろうとしたら、家人に止められた。私が死んだ後誰がそのおキツネさまの面倒を見るのだ、というのである。確かに墓仕舞いならぬ祠仕舞いの問題は看過できない。不燃ゴミの日に出せばバチが当たりそうだ。いやそれ以上に祟りがありそうだ。ということでお稲荷さんは祀っていなし、お金もたまらない。おキツネさんの代わりに、小型の金次郎さんの像を時々眺めて、この姿では乱視や腰痛や水虫になるのではないかと心配している。

生口島の名荷から洲江に抜ける峠道のお稲荷さんへお参りすれば、海岸道路のなかった時代の状況を考えることができる。土生町では因島公園の下、田熊町と重井町では八幡神社の境内に稲荷神社が祀られている。三庄町では三区の政所に、京都の伏見稲荷の分霊を祀っている草深山稲荷神社がある。願い事ばかりでなく、大地の恵みへの感謝も忘れずにすべきであろう。

(写真・文 柏原林造)

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