2018年6月2日 / 最終更新日 : 2024年2月26日 times 故郷への手紙

故郷への手紙【64】巡り合わせ

巡り合わせ

巡り合わせというものが本当に存在するとしたら、私はとても恵まれている。

毎週火曜日の早朝、恵比寿で仕事をしてから一日が始まる。日中の時間に余裕が出来るので、これを機に色々なことをやってみることにした。
その一つが映画館で映画を観ること。隣駅の目黒に小さな映画館がある。以前観そびれた映画がそこで上映されると知り、一ヶ月前から予定を組んでいた。
八時半に恵比寿を出て目黒まで徒歩十分程。映画の上映は十時、まだ時間があった。
ある場所をふと思い出した。
東京に来てからずっと気になっていた場所がある。
電車からいつも見えるあの景色、あの建物、「あれは一体何なのか」と、この九年間気になりつつも確かめに行かなかったあの場所。
今しかないと、地図も見ずに歩き続けた。撮影用の建物が並ぶ場所のようだった。ヨーロッパの街、ニューヨークの建物、西洋風の雰囲気を漂わせていた。

恵比寿での仕事の依頼がなければ、朝早くに恵比寿に行くことはない。映画館がなければ、目黒まで歩いて行くこともない。
目黒に来なければ、気になっていた場所へ行くこともない。
バラバラのかけらが、一つずつ繋がる感覚。
タイミングと場所との巡り合わせ。
その場所での人との巡り合わせ。
この先も、そういう見えないものに敏感でいたい。