因島で見た野鳥【93】クイナ 旅鳥か?

春に来たクイナ

クイナは、ツル目クイナ科、全長29cmの鳥である。本連載【37】で取り上げた。そこでは、「秋・冬には本州中部以南の湿原にすむ」(フィールドガイド日本の野鳥:日本野鳥の会)を参照して因島では冬鳥とした。しかし、観測できたのは春と秋で、それぞれ短時日間のみである。冬鳥であれば、警戒心が強い鳥とはいえ、湿地でカモ類の観察中に姿を見せてもよいと思われるが、冬季に見たことはない。写真のクイナは、2020年4月15日に撮影したもので、以後、数日観測を続けたが、再び見ることはなかった。従って、本連載【84】でタシギ(類)を旅鳥と判断したように、クイナも旅鳥で、春は南の越冬地から北の繁殖地に渡る途中で、秋は逆の渡りの途中で、因島に立ち寄ったと考えられる。

クイナとヒクイナ(本連載【38】)を含めて、昔は水鶏(クイナ)と呼び、戸を叩くように鳴くので、詩歌に「水鶏叩く」と詠われることが多いと述べた。

紫式部日記に、「渡殿に寝たる夜…」で始まる水鶏にまつわる一節がある。いくつかの解説を参考に、古典に素養のない筆者が、無謀にも、概要を次のように把握した。

「紫式部が宮中で寝ていた夜、誰か戸を叩いたが、戸を開けなかった。翌朝、藤原道長より、”クイナのように一晩中戸を叩いたのに開けてくれなかった”との歌が贈られてきたので、”どうせクイナだから戸を開けなかった”と返歌した。」

紫式部は一条天皇の皇后(中宮)彰子に仕える女房で、摂政・藤原道長は彰子の父である。道長と紫式部は「親密な間柄」にあったとはいえ、主従関係でもある。道長の訪問を無下の拒絶は差し障りがあるので機知に富んだ歌で返した。

平安の都人は、暗闇の静寂に鳴くクイナの声を詩情豊かに楽しんでいたのであろう。(2020年12月17日記)

写真・文 松浦興一

因島で見た野鳥【37】クイナ

因島で見た野鳥【38】ヒクイナ

因島で見た野鳥【84】タシギ(類)を春に見る

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