75歳老人のフーテン 2019東北の旅【29】雄勝の食堂

9月11日(水)②雄勝の食堂

雄勝(おがつ)町に入ってから道路は舗装されているが工事現場の道路状態で大小の石が散乱している。運転手は困った道だという風情である。

入り江の一番奥の家のなくなった町の中心地からU字カーブを切って対岸の道を進んでいく。1~2キロも進むと道路事情が一段と悪化する。運転手が車を止め、これ以上は進みたくない、車に傷がつきそうだと訴えるのでUターンすることにするしかない。この先ヒダのような連続する入り江の山ぎわに船主の家はあったのだが、残念であるが仕方がない。考えてみれば行っても間違いなく津波によりそこには何も残ってはいないはずである。

引き返し始めるとすぐに、土木作業員相手の食堂と地元の特産品の土産物の売店を兼ねたプレハブの店があるので止めてもらい、10分くらい待ってくれとお願いし了解をとる。気が付いてみれば人のいとなみが感じられるのはこの町ではここだけである。でかいダンプと重機と作業員だけが目に付く。

おがつ店こ屋街

店に入ると店内にはお客さんは誰もいない。すぐに40過ぎの厚化粧のおばさんが表れて応対してくれた。

50余年前の話だが第5雄勝丸の家の消息を知りたいというと、おばさんはよく知っている、家はこの先にあり私の家の近くだったという。30年以上は経過すると思いますが廃業・倒産したという。親はここにいたが亡くなっている。息子は鹿島台(かしまだい)に転居しているという。女川(おながわ)での情報通りである。娘さんはと聞くと仙台の国分町(こくぶんちょう)で飲み屋をしていると噂では聞いている。国分町といえば仙台指折りの繁華街で名が通った町だ。彼女は子供時分べっぴんで可愛らしかったからすぐに贔屓(ひいき)がたくさんできると思うと言うというと、おばさんはそうでしょうねと笑いながら相槌を打った。

そしてそれからが大変だった。私とその家との関係をしつこく何度も聞かれた。話題をそらすために土産物コーナーに行き生ウニが欲しいというと、今は生ウニ時期ではないので塩ウニにしなさいと保冷剤でくるんでくれた。車に戻りそれをカップルに渡した。

田中伸幸(因島田熊町)

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