75歳老人のフーテン 2019東北の旅【25】
9月10日(火)⑤
第5雄勝丸の消息を訪ねて女川(おながわ)漁協に行くため海岸に向かう。
シーパルピア女川を抜けると車道があり、その向こうには仮設のフェンスが設けられ港まで大がかりな土木工事が行われている=写真㊦。
作業員に港湾整備や津波対策の防潮堤の工事ですかと尋ねると、「違います、シーパルピアの拡張とそれに付随する公園の造成工事です」という。シーパルピアが今のところ大成功なので強気で押しているようだ。海のそばまでシーパルピアが迫ってくるのである。昔は漁船がそこにひしめいていた。見ると漁船は女川港の両側に分けられて、多くは漁協のある魚市場の方に移動されている。それを見ると女川が変わった事をつくづく実感する。
フェンスに沿って坂道を登っていると、若い綺麗で健康的な娘が追い越してきた。挨拶して話しながら歩いて行く。それによると彼女は東京の人で女川が気に入ってしまい既に12回も訪れ、友人もたくさんでき、そこに泊めてもらっているとのことだ。これから釣りのスポットに行くところなのだという。若い人には本当に女川の新しい町は原宿に勝る所かもしれない。新しい綺麗な街並みとこの素晴らしい景観、女川に惚れ込むのは充分にわかる。漁協と魚市場に行く脇道があるところで、彼女とは別れるが、まだまだ遠方からの珍客の私に女川の素晴らしさを訴えたりぬ風情であった。彼女は大好きな女川に来ていることで気分が高揚しているのが伝わってくる。しかし彼女が気に入ったのは今の女川の美しさで昔の女川は知らないのだ。とにかく彼女との10分間程度の会話には女川が人を呼び、リピーターにもつながる変貌を遂げていることを私に認識させてくれた。
にもかかわらず50余年前のノスタルジアに取りつかれた旅の途中の私の気持ちはそれを認められなかった。彼女の女川の素晴らしさの訴えにも拘わらず、私には50余年前の女川の通りや街角や港の風景の記憶が呼び起されてくる。変わらないこと発展しないことは人間の心を癒す。それが観光資源という意味がこの年になるとわかる気がする。しかし未曽有の災害にあった女川の行政に携わる人たちにはこのような形を選択せざるを得ないのであろう。
田中伸幸(因島田熊町)
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