因島文学散歩【19】因島南中学校(旧因島高校跡地)付近(因島土生町郷区)

因島南中学校付近(因島土生町郷区)

昭和43年(1968年)の初夏の頃、文芸評論家江藤淳さんの講演会が因島高校であった。細美(ほそみ)校長の講師紹介の後登壇された江藤さんは、開口一番「太陽がいっぱいって感じですね」とおっしゃられた。おそらく土生港の桟橋に降り立った時の印象だったのだと思う。かの、有名な映画はまだ因島に伝わっていなかったのか、誰も笑わなかった。

数日後の昼休み、図書館に行くと、カウンターの近くに文芸春秋社の大きな封筒があったので、司書の方に尋ねると、講演会の後数名の生徒らと座談会があり揮毫を頼むと、後で送ると色紙を持って帰られ、それが届いたのだということであった。その色紙には「桃李不言 下自成蹊」と『史記』にある有名な格言が書かれていた。

新旧の建物が複数の段差の敷地に複雑に建てられていた所はきれいに整地され、今は因島南中学校になっている。講堂や図書館がどのあたりにあったのか思い出すことはできないが、図書館は一番奥にあったので、グランドの端の方にあったのだろうかと想像するだけである。

当時は郷土史などに興味はなかったが、この辺りは村上水軍の時代と江戸時代をつなぐ貴重な史跡に溢れているところである。

現在では、ごくわずかの中学校や高校を除いて、タレントかスポーツ選手以外の講演会を開催できるところはまずなかろうから、戦後稀な、古き良き時代だったと、この辺りを歩くと思いだす。

さて、その色紙は今はどうなっているのであろうか。移転後の現在の因島高校の図書室か校長室に飾られていたら「奇跡」、図書室の戸棚にでも保管されていたら「上出来」、無くて誰も知らなくても「当たり前」だと思うほど、昔の話である。

(文・写真 因島文学散歩の会・柏原林造)

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