スーパーに巻きのり探す媼いて見知らぬ我に息の帰郷告ぐ

河内せい子
 人の感情は「気分、喜怒哀楽などの気持」と説明されるようです。この四つの感情で特に好まれるのは、「喜び(心にうれしさを感じること)」でしょう。


 ある日、作者がスーパーで知り合った媼(おうな)は隠しようもない喜びを漂わせ、作者に語りかけるのでした。
 「今日、息子が帰ってくるんじゃが」
 「あの子は巻き寿司が好きで、だから巻のりを探しとるんじゃ」
 「五時の船で帰るヶに、おまんまも炊かにゃァならんが、巻きのりが見えんで………」
 息子の帰郷で一人暮らしの淋しさから開放され、余恵(よけい)の思いを全身に標わせる媼の姿に作者は感動され、同時に媼と作者の間に喜びの交換が行われ、媼の喜びは作者の包容力により更に高められて、媼の笑い皺は照り映えたと思われます。
 古来、ヒトには家族という共同体があり交際術伝授の場でもありました。
 現在、ヒトは高齢過疎化に直面して家族の有り様が問われています。
 この一首で媼がご子息の帰郷を喜ばれ、その温かさに作者が感動された場面でさえも、媼の孤独感を垣間見る世に変っていますが、それでも私は媼に満面の笑みを見たいのです。
 巻きのりの売り場を媼に教える作者、喜びを喜びとして語る媼と聞く作者、そうした情景に接したご子息は安らぎを見つけるでしょう。
 このような優しさと安らぎを築く出発点を、この一首は示しています。
(文・平本雅信)

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