ふるさとの史跡をたずねて【193】廻国供養塔(因島重井町善興寺)

廻国供養塔(因島重井町善興寺)

芋地蔵尊のモデルである大三島の下見吉十郎翁がわざわざ鹿児島まで行ったのは全国66か所のお寺に法華経を奉納する巡礼のためであったことは既に書いた。それを達成した人が結願記念に建立した廻国(かいこく)供養塔の一部についても以前に書いたことがある。因島にある残りの廻国供養塔についても書いておこう。まず重井町の善興寺にあるものから。

廻国供養塔

鐘楼の隣に、上に立派な子安地蔵尊を載せてある長方形の石塔がある。一見、これらは別物のように見えるが、両者一体で廻国供養塔なのである。これと同じようなものを岡山県と広島県の県境で見たことがあるので、これが基本パターンと思っていたが、島内各地のものは千差万別で、予算の違いが歴然としている。ただ、書かれた文字はほぼ共通で「天下泰平 日月清明 奉納大乗妙典六十六部廻国」に近いものが書かれている。今回紹介するものには、更に「肥後國天草郡世濠村 長五郎 この女」「雲州 勝三郎」また 文政13年、嘉永元年の二つの願主、二つの年号が書かれており、上と下が別々の人に寄って奉納されたものであることがわかる。しかし、なぜ他国の人が重井に廻国供養塔を建てたのかは理解できない。

以下、私の推定である。年代的には白滝山の石仏群が完成してから遠くないから、廻国巡礼中に白滝山の評判を聞き、立ち寄りこういう形で寄付したのであろう。さてそれでは、因島の地に骨を埋めたのかというと、そうではないと私は考える。今治市の四国55番南光坊へ行くと因島の人たちの名前を書いた寄附碑がある。また、金毘羅さんや大阪の住吉神社にも、因島の人の名前があると聞く。これらと同じように考えてよい思う。ただ、六十六部の行者であったので、廻国供養塔となっただけであろう。このように考えると結願記念ではなく、途中であるが、天下泰平、すなわち世の安寧と自己の平安を願って建立したと考えるのがよいかもしれない。

(写真・文 柏原林造)

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