因島にて…Ⅱ 地域から見えるもの【9】津波を考える(2)

掲載号 11年07月16日号

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 4月5日の毎日新聞は、「東北の人たちを信じよう その忍耐と英知を」という見だしを掲げ、明治以来3回、三陸海岸を襲った巨大津波の写真を掲載している。それらは、今回の大津波被害と酷似していて衝撃的である。

 同紙の解説によれば次の通りである。1896年(明治29)の明治三陸大津波。約2万2000人が死亡。陸上での震度は2~3程度だったとされ、避難する住民はほとんどおらず、30分後に津波が襲来。岩手県綾里村(現大船渡市三陸町)では津波の高さ最大で38.2メートル。

 1933(昭和8)昭和三陸大津波。死者、行方不明者は3064人。津波の高さ最大28.7メートル。岩手県田老村(現宮古市田老)などが壊滅。

 1960年(昭和35)チリ地震津波。南米チリ近海で発生から約22時間へて日本の太平洋岸各地に襲来。岩手県大船渡市や宮城県南三陸町など三陸沿岸に大きな被害を与えた。

 翌日3月12日の新聞は、チリ地震津波から50年を経て起きた東日本大震災を1000年の1回規模であると報道した。

―今回の地震との類似性が指摘される貞観地震は、869(貞観11)年7月に発生した。産業技術総合研究所の最近の解析によると、貞観地震の震源域は宮城県沖―福島県南部沖の長さ200キロ、幅100キロ、地震の規模はM8.4と推定される。

 政府の地震調査委員会の阿部勝征委員長は「今回の地震はすごい地震で言葉もでない。今回の地震は、この貞観地震の再来かもしれない。過去1000年に1回起きるかという巨大地震だ。最近は、東海地震や東南海地震、南海地震に注目が集まっていたが、東北地方の地震の見直しをしているところだった。(毎日新聞)

 3月25日の朝日新聞・科学欄は、寒川旭産業技術総合研究所招聘研究員の見解を紹介している。同研究員は、古い地震に詳しい。

―この震災(東日本大震災)は1000人の犠牲者を出した「貞観の大津波」に似ている。9世紀は、大地震と噴火が続き、千年に1回の現象が相次いだ。

 841年に伊豆半島の丹那断層でも地震があり、糸魚川・静岡構造線断層帯の一部が活動した可能性がある地震も長野県中部で起きた。864~866年には富士山が噴火。868年には兵庫県の山崎断層も地震を起こしたと考えられる。

 貞観の大津波の9年後には、関東南部で地震があった。海溝型か断層による地震かはっきりしないが、死者多数という記録が残る。880年は中国地方で出雲地震もあった。887年には津波で大被害を出した南海地震が起きた。東海・東南海、南海同時発生の可能性がある。

 相次いだのは偶然か、関連したのかはわからない。現在は、この時代と似ているのかもしれない。21世紀半ばに、東南海、南海地震の発生が予測されているからだ。巨大地震と連動して大津波がくる可能性を改めて認識して、備えることが重要だ。

 4月14日の朝日新聞・科学欄は、東京大理学部のロバート・ゲラー教授(地震学)の大津波「予想できた」という見解を載せている。

―ゲラー教授は、過去100年以内に起きたM9級の地震が、チリやアラスカなどいずれも日本と同じ環太平洋地域で起きていることに着目。「世界の地震を無視しなければ、時期の特定はできなくても、地震と津波の規模は想定できた」と指摘する。

(青木忠)

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