創業99年の蔵元 こだわりの手造り 厳寒の酒仕込始まる

掲載号 11年01月29日号

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創業99年を迎えた尾道市因島田熊町の備南酒造(有)=藤本久子社長・蔵元TEL0845・22・0523=で今年も伝統にこだわった酒造りが始まった。

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一年中で一番寒い季節を選んで酒仕込み。かつて因島に7軒あった酒造会社も今はここだけになった。今年の冬はことのほか寒い。朝あけやらぬうちに酒米を大釜で蒸し、桶に入った蒸し米を肩にかついで運ぶ。床にひろげてさましたあと、ころあいを見て室内30度の麹室(こうじむろ)に移して酵母菌を植えつける汗だくの作業。

人間でいう出産前後の作業である。この室で酒米にくるまれた酵母菌の活動が始まると別棟の厚い土壁の仕込み庫のタンクに移され本格的な醗酵過程に目がはなせない。室温や外気を気遣って、昼夜2時間おきにタンクの醗酵過程に注意がそそがれる。

順調に作業が進めば、来月中旬ごろには一番掛けの槽搾(ふねしぼ)りにかかる。酒造りの工程で一番緊張する作業。ヒノ木造りの木枠の箱の中で乳白色の「もろみ」を袋詰めにしてしぼりとる。この搾りたての原酒を「ふなくち」といい、順調なら2月26日(土)に恒例の酒蔵を一般開放して「新酒祭」で賑わう。

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新酒造りは毎年0からスタート。ピーンと張りつめた蔵の中は蒸し米の湯煙が立ち込める。

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