吉田正浪氏を偲んで

掲載号 11年01月29日号

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 彫刻家で比治山大学短期大学部名誉教授の吉田正浪氏が25日、尾道市因島田熊町の自宅で亡くなった。生れ故郷の因島田熊が大好きで大学を退官後は錦を飾るというのでなく、みかん畑に囲まれて海が見える所に「ついのすみか」を建て静かに余生を送りたいと願望通り実現された。

 彫刻を楽しむ人たちのためのアトリエも住居に併設、訪れる人は親切に指導もされていた。「貧乏人の子沢山だったが大学に進学させてもらい、世の中に少しは貢献できた」と、感謝の日々だったが突然の訃報に耳をうたぐった。

 何作かの歴史上の人物の制作に意見を聞かれたことがある。因島文化協会発注の「母之教」(本因坊秀策囲碁記念館)では秀策像研究のため尾道市民劇団の「秀策物語り」をスケッチ。碁石を運ぶ仕草までも克明に取材する姿勢に真剣勝負を思わせる気迫を感じた。そして秀策母子情愛の向う側には帆をあげた小舟を浮べるという遊び心も持ち合わせた人だった。惜しい人物をまた一人失った。合掌。

(村上幹郎)

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