せまき谷占めて光の散乱は朝日に無数のアキアカネ舞う

吉原 浩子
 アキアカネの別名はアカトンボ。

夕焼け小焼けの赤とんぼ
負われて見たのは
何時の日か

 安野光雅画伯の著書「絵本歌の旅・講談社」の、画伯の赤とんぼの絵を見て、私は童心に帰る。


 さて、生命の尊さを詠われる作者は「無数のアキアカネ」に遭遇されているが、鑑賞子も似た経験を持つ。
 某日、神戸の六甲山頂付近から淡路島を見ていると、山系ぞいに一群の雲が近付く。神戸の風物詩「淡路から六甲へアカトンボの大移動」があると知っていたので待つ、やがて乾いた羽音が上空を覆った。
 作品の「せまき谷」とわが体験「六甲山系上空」という違いはあるが、アキアカネの乱舞を見て『ここに生命あり』との感動は、永い時間を越え、種を超えた生命活動なので、両者に大きな違いはない筈だ。
 作者はアキアカネの羽光を浴び・何かの啓示を得られたであろう。この場合、啓示とは「心の見聞」という意味で、人間の言葉に翻訳できないのではないか。
 話変わって、ある時、安野光雅の前で小沢昭一が唱歌を歌って泣いた。では小沢は何故泣いたのか。
 その時、小沢は「空にさえずる鳥の声…」と歌詞をかみしめるように歌ったという。無心に歌う小沢は童心に帰り、自然を美しいと信じ、自分の生き様と自然の有り様を比較し、思わず涙したのだろう。
 作者も無心にアキアカネの群舞を眺め、この穏やかな山野を子々孫々に譲りたくなり「空にさえずる鳥の声…」と歌われたかもしれぬ。
(文・平本雅信)

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