縫う描く両手十指の健やかも八十半ばを視覚障害

小林美津子
 この一首から「老い」を考えた。以下は老いるという心身の変化に、どう処するかの素人考えである。
 貝原益軒翁の言を引けば『生まれつきたる天年(寿命)は多くは長く』、また『心は楽しむべし、苦しむべからず』とある。要するに貝原翁の説は『くよくよしないこと』と解釈したい。


 さて、作者は芸百般に及ぶ達者と推測した。想像によると「縫う」という技には、間尺を合わすなどの高等な判断が必要らしい。また、「描く」となれば精密な観察と大胆な省略という抽象能力が要求される。
 この二つの抽象芸から、作者・鑑賞者共に得もいえぬ喜びを味わうなど、その活躍の程が偲ばれる。
 思うに、作者の両手十指は限りない楽しみを作り出したが、八十半ばとなり視覚障害に見舞われた。
 この時、『作者は見えねば「視る」』という高等芸を発明され、視るべきものはありありと視られたが、反作用の「視ても見えぬ苦しさ」も経験された。
 こうした個人的な苦楽とは別に、社会的な苦楽も生まれる。即ち「老い」とは何か、どう生きればよいのか。また、老人を囲む「福祉・医療・年金」には若者の参加が必要になる。
 作者は健やかな十指を「よく働いた」と満足の目で見ておいでだ。この場合、【1】歪が無ければ「しあわせ」【2】歪が有れば「ふしあわせ」とする。また歪とは、社会制度対個人生活のアンバランス係数としておく。
 歪対策は「【1】【2】の内容と比率を公表し議論する」だろうが、まず「和やかさ」が必要だ。
 その近道には…
 先祖の遺産「短歌を詠む、鑑賞する」がお薦めである。
(文・平本雅信)

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