因島文学散歩【12】鴻雪爪の墓(因島中庄町金蓮寺)
鴻雪爪の墓(因島中庄町金蓮寺)
小林の倅、すなわち小林無底和尚に連れられて因島を出た鴻雪爪(おおとりせっそう)は無亭和尚の指導で大成するのであるが、小林無底和尚の子が永平寺六十二世管長となる青蔭雪鴻である。青蔭雪鴻にとって鴻雪爪は兄弟子であるとともに、後に師ともなる人である。二人を指導した小林無底和尚も傑物だと思われるが、今の所この文学散歩で紹介する材料はないので、この話は打ち切り、鴻雪爪の花見の続きに戻ろう。
元佐賀藩主鍋島閑叟へ鴻雪爪は言った。
「これは天下の名侯」「久しく侯の英名はきいておりましたけれども残念ながら侯が天下の混乱に際してなにごとをなされたかという御業績はついぞ耳にしませぬ」「往時は問い申さず、よろしく今日を論じ、明日を計るべし。すでに日本一新し、国是さだまるこんにち、なぜ侯はその藩力をあげて国政に参じようとなさりませぬか」暴言である。(司馬遼太郎、『歳月』、講談社文庫、126頁)
ということで佐賀藩、ひいては江藤新平の登場となる。この小説の主人公は江藤新平であるので、鴻雪爪の一声は歴史を変えたと言っていいであろう。
なお、鴻雪爪の死後、遺骨の一部は故郷にも帰り、金蓮寺の中腹に眠っている=写真。
明治の政治家としての鴻雪爪は神仏習合をやめさせ、キリスト教を公認させた。そこまでは良かった。しかし、神道、仏教、キリスト教以外は認められないということで、幕末に起こった民衆宗教の多くは変貌し初期のダイナミズムを失った。もちろん、これらは鴻雪爪の責任ではなく、後の為政者がやったことである。これらの民衆宗教は戦後、元に戻る機会はあったはずであるが、そうはならなかった。だから明治以降のこれらの民衆宗教には、私は興味をもたない。
(文・写真 因島文学散歩の会・柏原林造)
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