因島文学散歩【2】白滝山(因島重井町)

白瀧の石の羅漢の尖(とが)りたる頭のうへの山藤の花

吉井勇は土生で3首の歌を残した翌日か、さらに次の日にか重井の白滝山へ登った。おそらく船で移動したのだろう。歌集には6首が採られている。そのうち羅漢についてが3首あり、どれを冒頭に置こうかと迷った。他の2首も素晴らしい。どれを冒頭に置いてもよい。また、6首の配列もよく、そのまま6首を並べてもよかった。結局4首目を冒頭に置き、他の5首をそのまま並べるので、全体の構成につても見てほしい。奇岩1首、羅漢3首、そして海を含む景色についての2首である。

旅ごころやうやく倦みぬこの山に吾(あ)をおどろかす奇し岩もがな

おほどかに海見はるかし今日もゐる白瀧山(しらたきやま)の石羅漢かも

石ながら螫(さ)されやすらむ道の邊(べ)の羅漢の鼻に虻(あぶ)のとまれる

山の上(へ)ゆ眸(ひとみ)はなてば瀬戸の海の汽船小さく煙吐く見ゆ

白瀧の山にのぼれば眼路(めじ)ひろし島あれば海海あれば島

山頂には十六羅漢が釈迦三尊像を取り巻いてあるが、白滝山五百羅漢というのはたくさんの羅漢の意だから、他の石仏も全て羅漢だと思ってもよい。羅漢以上に高位の文殊菩薩、観音菩薩、あるいは釈迦如来も含めて羅漢像と呼んでもよいのだが、この3首の羅漢はそんな大物ではなく、素人の製作に違いないありふれた石仏を詠んでいるように思われる。

…ならば650体以上の石仏のどの一体の写真を選ぶかということは6首のうちからどの一首を選ぶよりも、はるかに難しいことになる。まして山藤だの虻などを添えるのは、はじめから諦めておく。また尖がった頭の羅漢というのも、そんな視点で見たことがなかったので、基準がわからない。ということで、早くも2回目にして題材と写真との問題に直面した。

それはともかくとして、これらの歌の安定感はどうであろうか。いずれも田舎の山の景観が染み出しているようである。おそらく、三流観光地まがいの珍談奇説がまだなかった頃の、素朴な白滝山を想像すれば、これらの歌のもつ雰囲気がよりよく理解されるのであろう。

(文・写真 因島文学散歩の会・柏原林造)

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