ふるさとの史跡をたずねて【118】隠島神社(因島中庄町権現)

隠島神社(因島中庄町権現)

干拓の話から峠道の話になり、迂遠な印象を持たれたことであろう…。しかし、葬式と結婚式が人生の裏表であるように、特に因島では、干拓と峠道は歴史地理の表裏であるから遠回りをしているわけではない。

民俗学者の柳田国男さんによると、峠道は交通機関の発達とともに、より遠くより低くなった、とのことである。しかし、因島では、荷車や自転車では無理な山越えを避けようとしても、海に阻まれるところが大部分だった。現在の自動車道の大部分が埋立地や干拓地であることを思えば、そのことがよくわかるだろう。

さて、中庄湾の干拓を考えるとき、因北小学校より東側は新開名がたくさんあり、その歴史がよくわかるのだが、そこより西側になるとよくわからない。おそらく中庄湾を囲むようにしてある山の窪地が海と出会うところから土砂が堆積し、荘園時代には、そこに小さな塩田が作られたのではないかと、想像するだけである。そのような位置に多くの神社があるということは、人の生活出来るところが、海と山の境目にあるわずかの土地に限られていたということであろうか。

中庄町権現の隠島神社から南を見下ろすと、中庄湾の最深部がよく見える。次第に高くなっていっているのは、長い間にさらにその上に土が積もったということであろう。

ところで、『日本三代実録』の元慶(げんぎょう)2年(876)12月15日にある「備後国無位隠島神に従五位下を授く」(原漢文)が文献上最初に登場する因島の名だというのが定説である。もっともそれ以前のものが見つかれば別である。また、この「隠島」が因島のことだと解釈してのことである。これについては、前後に近くの島があり、周辺に「隠島」から連想される地名を探すことができないから、因島のことだと思ってよい。なお、ここから向島のカゲになっている、というのが因島の語源だとする説があるが、同じ音の漢字が混用された時代が長かったことを思えば、重井を重ねて水を飲んだ井戸と解釈するのと同様、妄説にすぎない。

(写真・文 柏原林造)

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