2018年7月21日 / 最終更新日 : 2024年2月26日 times 故郷への手紙

故郷への手紙【67】夏が来る

夏が来る

夏が近づく。
この時期のわくわくする心地が好きだ。
梅雨の雨はあんまり好きではないが、暖かく肌に触れる空気は好きだ。
空の色が鮮やかになって、自然の生命力を感じる気がする。
生物の心も開放的になり、活動的になる気がする。
私もその一部分として、夏を待ちわびている。
暖かく優しい風が吹くと、海の気配を感じる。
防波堤に脚を伸ばし、島々を眺めていた頃を思い出す。
身体に残る潮の香りを思い出す。
ビーチサンダルを履いて、駆け出す夏。
部活の後、Tシャツのまま飛び込む夏。
誰もいない海で、独り占めして泳ぐ夏。
鮮やかな記憶がいつも私を奮い立たせる。
東京に来て数年は、帰省する喜びをあまり感じていなかった。
帰省することにちょっとした義務感のようなものを感じていた。
今は違う。
因島に帰ることを楽しみにしている。
島の景色、海風の心地、緑の香りを恋しく思う。
島の空気を吸いたくなる。
深呼吸したくなる。
あぁ、夏が待ち遠しい。