ふるさとの史跡を【160】たずねて 弘法大師立像(因島重井町白滝山)

弘法大師立像(因島重井町白滝山)

末広講、鶴亀講と書いてきたので、次は当然のこととして弘法大師空海の立像である。場所は因島重井町の白滝山の一番高い所。

白滝山の主な石仏はほとんどが北を向いている。例えば、弘法大師空海が中央に座っている三大師坐像も北を向いている。これは向かって左が達磨大師、右が道元承陽大師で地元のお寺の曹洞宗に関したもの。不思議なことであるが、こういうものも含めて白滝山の石仏群は五百羅漢と呼ばれている。

これらは北から登ってくるので、そちらを正面として設計したからだろう。勿論、釈迦三尊像周辺のように、その周囲に並んでいるものは当然各方面を向いているが、それらはたいてい小さな羅漢さんなどだから、話は別である。そんな中で、弘法大師立像は南を向いている=写真

誰が言い出したのか知らないが、故郷の四国を向いておられるということである。私もそのように思っているのだが、この機会に考えてみると、ちょっとおかしい。

言うまでもなく弘法大師空海は高野山に真言密教の道場を開いて、そこで入定された。そして「弘法大師は高野の御山にまだおわします」と信じられてきた。だから、同行二人の身近な弘法大師を考えて庶民流に故郷を向いていると考えるのもよいが、やはり宗教界の偉人として尊敬するのであれば、高野山の方を向かせてあげるべきだった、ということになる。

ということで、結果として故郷の方を向いているだけで、本当の意味は、ここが四国霊場の代わりをする霊場で、当然四国側が正面になっていたということであろう。

南向きの問題はこれくらいにして、次は台座の文字に移ろう。台座には「天保三年壬辰初夏日 當所摂待講中」と彫られている。天保3年は1832年で、白滝山の石仏工事が完成したのは文政13年(1830)であるから、ほぼ同時期である。このことと、その工事期間中に弘法大師坐像を含む三大師坐像も作られているから、白滝山五百羅漢と弘法大師信仰が互いに対立するものではなかったことがわかる。

(写真・文 柏原林造)

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