時代的背景を紡ぐ 本因坊秀策書簡【2】NHK大河ドラマ「篤姫」と囲碁(その二)

 将軍が大奥にお渡りになる寝所といえば徳川家のお胤(たね)を宿し子孫をつくるところである。その床入りの寝室に碁盤を持ち込み篤姫が上様(家定)と囲碁を嗜むシーンが6月1、8日の2夜連続で放映された。囲碁といっても「五目並べ」である。「わしは、めんどうなことは、きらいだ」という家定のキャラクターを考えての設定だろうが実にうまいシナリオである。


 碁打ちの評価はまちまちだ。源氏物語に出てくる平安絵巻の対局風景、そして僧侶、武将、女官、花魁(おいらん)までもが嗜んだという囲碁を徳川家康が制度化して以来、徳川幕府は家元四家(本因坊、井上、林、安井)を庇護、御前試合ともいえる御城碁を創設した。そんな仕来たりの城中で「五目並べはないよ」という意見である。
 その一方で、ドラマにいちいち「めくじら」をたてることもない―という意見にも耳を傾けてもいいのではなかろうか。
 五目並べは、囲碁と同じ碁盤と石を使って、黒、白交互に置き、先に5個を直線(タテ、ヨコ、斜め45度)に並べたプレイヤーが勝ち―という簡単なゲームである。
 囲碁同様に古代中国を起源とし、朝鮮半島を経由して日本に伝わったとされる。だが、日本ではルール改正などして独自の発展をしたため現代の五目並べの起源は日本であると主張する。だからといって、日本には正式なルールや大会、広く一般に認められた団体など存在しない。
 いつものことながら歴史小説にあたって思いおこすことは、産経新聞の記者時代の先輩、司馬遼太郎氏の言葉である。昭和37年の新緑の季節だったと記憶している。島根県浜田市の亀山旅館の一室でのこと、「歴史小説はノンフィクションによるものだが、三割ぐらいのフィクションがないと読者にとっては面白くない。それ以上、史実を曲げるとつまらない作品になってしまう」というわけだ。
 天下分け目の決戦を交えた関が原で勝利した徳川勢が全国を統一。やがて訪れた太平の元禄時代に囲碁が盛んになり本因坊四世碁聖道策が世に出た。その後は「碁所」をかけての争いの場となり囲碁界は戦国時代を迎えた。時を経て、十二世本因坊丈和名人が頂点に立つことでこの世界を治めたが長くは続かなかった。天保の大飢饉、江戸の大火、東海大地震などの天災に黒船来航。こうした乱世の中で幕府は力なさを憂い、うつけのふりをしながら日々を過す将軍家定を「五目並べ」を通してやる気を起こさせる篤姫の奇想天外な発想。これが起死回生の一手となって、自分の思い通りに上様をお手助けするストーリーはまことに面白い。だが、世情は安政の大獄へと移り変り、秀策が父に宛てた手紙には「当地、棋は甚だ不はずみの様子」と囲碁の不振を嘆いている。
(庚午一生)

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