時代的背景を紡ぐ 本因坊秀策書簡【5】NHK大河ドラマ「篤姫」と囲碁(その五)

 閑話休題 男女七歳にして席を同じゆうせず(礼記・内側)という中国の儒者の古礼を集めた説に習い幕末の上級武士の家では年ごろの男女がデートする機会などなかった。そこで、大河ドラマの「篤姫」では今和泉家での於一(篤姫)と喜入(きいれ)の領主肝付家の三男尚五郎=小松帯刀(たてわき)=が二人だけで語り合うシーンに囲碁が一役買っている。


 篤姫のセリフに「碁石には序列がないが、打ち手の思惑で生き方も局面も変わる。だが、女は自ら生き方を変えることができない。だから碁石がいとおしい」という場面があった。思い通りに生きられない娘心の切なさ、ジレンマを囲碁という競技の特性にからめ表現したあたりは心にくい。
 将棋の駒(こま)は王将、飛車、角、金、銀、桂、車、歩と、それぞれの格と特性がある。碁石は白と黒で序列がない。だが、打ち筋によって人間性や心の乱れまでが出てくるものである。どちらかというと、女性の方が攻撃的だといわれるが、ドラマでの篤姫は男勝りな一面もあるので、大局を見る目も備えていたとしても不思議でない。一方、尚五郎は気弱な面があり、打ち筋が優しく戦いを仕掛けるイメージはうかがえない。
 上級藩士のなかで囲碁が好まれたことはいうまでもない。下級藩士だった大久保利通や西郷隆盛も碁好きだった。囲碁の歴史は古い。家康の時代からプロ棋士が幕府によって保護され、教養人の間で親しまれてきた。官賜御所が家元衆をまとめ寺社奉行の配下に属し江戸城で行われる御前試合ともいえる御城碁に出仕する棋士にとっては名誉なことだった。
 秀策が故郷の父や尾道の後援者、橋本吉兵衛竹下に送った手紙の中にもあるように将軍が囲碁を好きか、どうかで発展の度合いが違ったようだ。
 篤姫と将軍家定が寝所で碁盤を挟んでの政略的な会話のシーンは「五目並べ」で、めんどくさがり屋でウツケのまねをしていた将軍の私行にはうってつけの場面を作った。純粋に勝ち負けを楽しみたいとき、対人関係のコミュニケーションを大切にしたいとき。日常の憂さを晴らし無になりたいとき。じっくり自分と問い合いたいとき…いろいろな思いを受けとめてくれるのが囲碁の世界の中にある。
 原作/宮尾登美子「天璋院篤姫」脚本/田渕久美子・囲碁指導・監修は少年少女から男女高齢層まで人気がある第10期女流棋聖梅沢由香里さん。漫画「ヒカルの碁」に続きドラマでは碁の打ち方、礼儀作法から対局が終った後の碁石の片づけ方にも細かな指導のあとが見られた。
 大河ドラマをきっかけに囲碁に興味を持ち本因坊秀策囲碁記念館への注目度が高まれば―と期待したい。
(庚午一生)

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