西方に傾けばすこしふくらみて日は横すべりに山に呑まるる

小林基美
 一見して平易に詠まれているような一首だが、作者のひとひねりは人を驚かすに足るものだ。「ふくらみて」までは日常から外れていないが、「日は横すべり」以下の詠み込みからは、詩的想像を掻き立てられる。


 日常感覚でいうと、太陽は垂直に昇り、垂直に日没する。その経験は地動説的であって、実生活にも適応している。だから、我々は「日は昇り、日は沈み」などと対句で用い、ささやかな楽しみを味わっている。そんな平穏無事をひっくり返す一首が現れた。「日は横すべり」と詠まれた下句がそうである。そこで、この一首を鑑賞し、批評し、できれば短歌の秘密に近付きたいと思う。
 ところで、上句には個性的な読み込みがないので、紙数都合により割愛し、いきなり「日は横すべり」以下に触れたい。
 「日は横すべりに山に呑まるる」では、(1)「横すべり」という意外性、(2)「山に呑まるる」の軽み 作者は、この(1)(2)の複合で、現実を遊離した不安定感の表明を期待されているようだ。
 一説(北澤典昭)によれば、軽みとは善悪を超える芸術の特質で、喜怒哀楽を超える人間精神の証、また人間に対する信頼の表明とされている。それを此の一首に当てはめれば「短歌には目に見えないものを見るという行為もある(辺見じゅん)」という実例となる。
 「目に見えないものを見る」ことは本来無理な話だが、同時に「見たいものは見たい」という現代的好奇心も無視はできない。こうした狭間で詠まれたこの一首からは、作者の知的好奇心の深さが偲ばれる。
 乞!愛読者諸兄姉の味読
(文・平本雅信)

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