島々を巡った文化船ひまわり号 ふね遺産認定に想う(尾道市瀬戸田町)
島々を巡った文化船ひまわり号 ふね遺産認定に想う
文化船ひまわりB・Bプロジェクト代表 藤田玲生(れお)
尾道市瀬戸田町にあるB&G海洋センター敷地内に保存されている「文化船ひまわり号」が昨年2021年(令和3年)7月、日本船舶海洋工学会主催の「ふね遺産」35号(現存船第14号)に認定された。勝海舟が艦長をしていた「咸臨丸(かんりんまる)」や日本初の有人潜水調査船「しんかい2000」などと並んで認定されたことは大変光栄である。
「文化船ひまわり」が高く評価されたのは、船体の構造や性能面ではなく、何よりも国内唯一の移動図書館船として、戦後1962年(昭和37年)から1981年(昭和56年)の20年間にわたって瀬戸内の19の島々に本や映画などの「文化」を届け続けたことにある。
第二次世界大戦終結後の1953年(昭和28年)12月から、広島県立図書館は、「ブックカー(移動図書館車)」3台で、図書館のない地域に本を届け始めた。しかし当時の広島県人口の1割にあたる約25万人が、瀬戸内海の島しょ部に住んでいた。そこで、島に住んでいる人たちにも本がいきわたるようにと、「文化船ひまわり号」が作られた。1961年(昭和36年)9月、江田島造船所で建造開始。12月進水式挙行。1962年(昭和37年)4月9日巡航開始。
広島県教育委員会は建造にあたって、「今後の人々には戦争を経験してほしくない。平和を愛する人を育てるには、まずなによりも文化に親しまなければならない」という理念と願いを込めた。
【船のデータ】全長=14メートル▽幅=3.65メートル▽深さ=1.76メートル▽高さ=5.6メートル▽総トン数=19.75▽速力=165馬力・約8.6ノット▽積載冊数1500冊。建造費462万円。
入港の知らせはドナウ川のさざなみ
スピーカーから「ドナウ川のさざなみ」を流して港への到着を知らせた。大人も子どもも喜びいさんで桟橋にとまっている「ひまわり号」に向かい、読みたかった本、読んでみたい本を船内や船上で読んだり、借りていった。時には、映画フィルムが積み込まれ、停泊した島の学校の体育館などで上映会が催されることもあった。まさに「文化を届ける船」であった。
文化船の役目を終えて
やがて島々に橋がかかり車で行けるようになったことで、1981年(昭和56年)7月31日最後の巡航となった。その距離は約9万2,000km、地球2周半。約45万人に70万冊あまりを届けた。役割を終えたひまわり号は、当時の瀬戸田町和気成祥町長によって同町に引き取られ、現在も瀬戸田B&G海洋センターに設置・保存されている。
プロジェクトの活動
文化船ひまわりB・B(ブック・ボート)プロジェクトは2017年(平成29年)発足。文化船ひまわりの保存活動を訴え、瀬戸田中学校生徒や住民有志らによって、さっそく船の補修や掃除、ペンキ塗りなど取り組んだ。割れたガラスも取り替えた。以来毎年4月には「文化船ひまわりまつり」を開催して、船内で子どもたちに絵本の読み聞かせをしてきている。今後、文化船ひまわり号が果たしてきた歴史的役割と教訓を、多くの人々に知ってもらい、今の私たちの暮らしに生かしていきたいと思う。
市内図書館巡回展示と講演会
「文化船ひまわり」ふね遺産認定を記念して尾道市内図書館で巡回展示と講演会が行われる。
【因島図書館】模型と写真パネル展3月2日~27日(日)16時まで。
12日(土)14時~15時。広島県立図書館副館長の植田佳宏さんによる講演。ひまわり号ペーパークラフトワークショップ。小学4年生以上20人要申込。
【瀬戸田図書館】
20日(日)14~15時。移動図書館船「ひまわり」講座。講師はプロジェクト代表藤田玲生。
この他、尾道中央図書館、みつぎと向島の子ども図書館、三原市立図書館でも巡回展示が予定されている。
過去記事
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