75歳老人のフーテン 2019東北の旅【82・83】粟島港湾事務所での話

9月18日(水)⑤⑥粟島港湾事務所での話

次の本土に帰る船は午後1時半の高速艇である。1時間半以上時間がある。

港湾事務所の例のおばさんの所に行き、「島の中はほぼ見てきた。暇を持て余している」と訴えると、「何ですか。我慢をしなさい」と言い、「冬場には船が欠航して島に何日も閉じ込められる人がいるのですよ」と厳しい返事である。

「でも、そこであなたのような美人の顔を毎日見られるので、それもまた愉しい時間のはずですよ」と持ち上げると、「その勢いで持ち上げておいて、その勢いのまま落とされるのは勘弁してください」という。等々、島にまつわる話を続けて盛り上がっていたが、客が来てしかたなく待合所の座席に座っていた。

ところが客が途切れたのか彼女が私の前に来て、自分の今の生活・自分の生い立ち・自分の今の気持ち・島への思いなどを語ってくれた。

これが良かった。実生活に裏打ちされた素直な気持ちがよく伝わってくるものだった。

新潟県粟島

その話によると彼女は新潟県粟島で生まれ義務教育の期間はここで成長したが、常に「こんな島なんかにおられるか」と思い続けていたという。
高校を出て、大学に進学したかは不明だが都会生活を過ごしたという。

しかし「どういう訳か成人式はこの島で行なっています。それが今ではどういうわけか大変誇りに思っている」という。

その後、島の男性と結婚したのであろう、島での生活がまた始まったが、常に島から出ていくことが念頭にあったという。

「40歳を過ぎる頃から諦めが付き始め、そして子供たちには自由にさせ都会でそれぞれ独立している」という。「その点では都会生活は身近にあるが、すでに私には馴染めぬものになっていることを実感している」という。

そして「今ではこの島の風景・自然・空気・人情・時のゆっくりとした流れなどすべてが体に馴染んでしまい、この島で生きることに誇りを持って幸福が感じられる」という。

「定年になった旦那も以前は定年後には島を離れての旅行プランをたくさん立てていたが、実際に行ったのは1~2度きりで、小さな畑の耕作と親譲りの船での釣りざんまいの生活送っている」と言う。この島での定年というと公務員ぐらいである。おそらく旦那は公務員なのであろう。

一方彼女のテキパキとした所作などには職業婦人の雰囲気があり、彼女も公務員もしくは役場の臨時職員といったところで共稼ぎ夫婦の感じがする。

彼女は思いのたけを話してしまったのだろうか、電話がかかるといけないからと事務所に戻っていった。そして客が引けたのを見計らって私は再び窓口に行き彼女に話しかける。「あなたと話をするともう一度粟島に来たくなる」というと、「10年後にまた来てください」と答える。「10年後は命の保証はないが5年後だったらどうにか元気でいそうだ」というと、「それなら5年後にまた会いましょう」と笑いながら会話をする。

「ところでこれからどういう予定ですか」と尋ねるから、「きららに乗って岩船港に行き村上駅までタクシーで行く」というと、「乗合タクシーを利用すると700円で村上駅に行けますよ」と教えてくれた。そして乗合タクシーに連絡をいれてくれた。これは有難かった。

田中伸幸(因島田熊町)

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