因島で見た野鳥【106】キジのつがい

キジのつがい

キジのオスを、本連載【3】【80】で紹介したが、オスの近くにいたメスを撮影できたので、再び取り上げる。

キジの全長はオス80cm、メス60cm。

オスは、顔に皮膚が露出してできる赤い肉垂が目立ち、後頭部に耳状に見える羽角がある。頭・頸は紫色から青色、腹・下面は緑色である。頭・頸・腹の色は、構造色で金属光沢があり、見る方向で色が変化する。肩羽は黒色と淡黄色の模様があり鱗状に見える。腰から上尾筒の羽は長めで明るい青灰色。

メスは、目の下に白い斑があり、全体に黄褐色で黒褐色の斑紋があり、地味な羽衣である。尾羽は、オスでは非常に長く、メスではオスに比べやや短め。

日本鳥学会の日本鳥類目録第7版では、キジはキジ目キジ科の1種で、4つの亜種(キジ、トウカイキジ、シマキジ、キュウシュウキジ)がいる。これらは生息地域が異なっていたが、現在では、交雑が進み、外形では識別できないとされている。因島で見るキジは種としてのキジで、亜種は不明。キジが生息していなかった北海道と対馬に、狩猟目的で外来種のコウライキジが放鳥されたが、これは首に白い輪があり、キジと識別できる。

同一種の雌雄で、形質が異なることを性的二型という。チャールス・ダーウィンは、「人間の進化と性淘汰(1871年)」で、雄が繁殖相手の雌を得るために行う雄間競争(例えば、牡鹿の角は雄間競争の時のみ役立つ)と、雌が雄を選り好みする(雌好みの形質をしている雄が繁殖相手に選ばれる)過程で生じた淘汰の結果、性的二型が進化したと述べた。これを性淘汰(性選択)という。

この説が実証されだしたのは1980年代以降で、最先端の話題の一つになっているとのことである(長谷川真理子「クジャクの雄はなぜ美しい?」2005年、紀伊国屋書店)。

本連載【24】ヒドリガモで、カモ類の雄が、繁殖期に目立つ色彩の羽衣になることを、性淘汰の一例として述べたが、キジの羽衣が雌雄で違うのも性淘汰の典型的な例であろう。

鳥は、雌が雄の羽衣に似た羽衣になる、いわゆる、雄変することがある。黒田長禮は鴨類の雄変の例を報告し、1912年に採取したマガモの標本も雄変例としている(鳥1964年18巻82号p130~132)。佐藤真(市立大町山岳博物館研究紀要1p71~74、2016)は、飼育下のキジが雄変していることを見つけ、他にもキジの雄変例があることを報告している。

魚類の多くは卵巣部分と精巣部分が合体した両性生殖腺を持ち(雌雄同体)、脳から分泌されるホルモンの影響で雄・雌となり、性転換もすることはよく知られている(桑村哲生:性転換する魚たち、岩波新書2004年)。

しかし、鳥類は哺乳類と同じく、性別は受精の時に決まり、死ぬまで同じであるが、卵巣の働きが高齢雌の雄化傾向の原因になる場合がある(ギル:鳥類学)。

キンケイ(金雞)は日本には生息していないキジ科の一種で、雌はキジの雌に似て褐色で黒い斑のある地味な羽衣をし、雄は金色の冠羽で赤と金属光沢のある黄色の派手な羽衣をしている(ウィキペディア)。

ギルは、”キンケイの雌の黒ずんだ羽衣は、この現象(高齢雌の雄化傾向)の結果として齢とともに雄のみごとな羽衣となる”と述べている。キジ科の一種・セキショクヤケイなどを祖先にするニワトリ(雞)も、雄変することがある。

写真・文 松浦興一(5月19日・記)

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