重松清作品に見る“家族”のあり方【4】

Ⅴ 重松作品で描かれている家族

重松氏はその作品中に、様々な境遇に置かれた様々な家族の心情を描く。それは時に思春期の息子や娘との接し方に戸惑う父親であり、女手一つで幼い息子を育て上げた逞しい母親であり、父親と些細なことで喧嘩をした息子であり、折り合いの悪い父と兄を客観視する娘である。これらの例から分かる通り、彼の作品の登場人物はほとんどが普通の人々である。それは限りなくノンフィクションに近いフィクションであり、そこには我々の共感を呼ぶリアリティーがある。

この重松作品最大の特徴ともいえるリアリティーは、以下によってもたらされると考える。一つは、石原千秋氏の評価にもある、「ほどよく壊れている」家庭を描いている点である。完全に崩壊した家庭では、ドラマ性はあるが多くの人からの共感は得にくい。誰もが抱き得る小さな心の闇を分かりやすい視点から描くことで、時に涙を誘い、時に目を背けたくなるほど鋭く核心を突いてくるのである。もう一つは、それまで確執のあった家族間に物語の中で明確な”仲直り”をさせないという点である。時間の経過や適度な空気感、距離感を掴むことでなんとなく関係が元に戻っているのだ。

ぼくは、「なしくずし」とか「なんとなく」って、すごくいいことだと思うし、好きなんだ。正面きって「これが悪かった、ごめんなさい」って謝らなくても、いつの間にか、またふつうに話している―親子でも、そういう関係になるのが、ぼくはいちばんいいなと思う。対抗してもしかたがない。ぶつくさ言いながらでも、なんとなく仲直りして付き合う方法を考えていったほうがいいかもしれないね。(重松清『みんなのなやみ』理論社・2004年)

と重松氏が述べるように、実際、家族間でのトラブルの後相手に直接はっきりと謝罪を述べることは少ないのではないだろうか。

(つづく)

平成27年度広島県ことばの輝きコンクール優秀賞作品
「重松清作品に見る“家族”のあり方」
因島高校3年 林真央

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