時代香るパン屋さん石田芳栄堂 石田昇さん(82)智都子さん(73)

掲載号 08年12月13日号

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 知る人ぞ知る、時代香るパン屋さん。因島三庄町の石田芳栄堂ご主人石田昇さんと奥さん智都子さんの師走は、餅づくりで忙しい。7日の巳午(みうま)の注文分が終わるや否や休む間もなく正月である。その最大の繁忙期には、長男夫婦がもどってくる。

 ご主人にはこだわりがある。米は広島の米に限るという。外米では光沢や粘りに格段の差がでる。今年は仕入れ値が上がっているが餅の値段は据置く心意気。

 町の注文に家族総出で応じてきた。昭和30年代のころ、近くの日立造船の社宅に住む300世帯の餅を石臼でつき、配達したことを懐かしむ。

 その後、機械を導入。現在のものは10年前に入れた2代目である。だが、餅は機械ではなく、一つひとつ手で丸めて心を注いで仕上げていく作業である。この店は、時代とともに庶民に根づいた商いをつづけてきた。明治生まれの父福夫さんが創業したのが、大正15年。戦争時には空襲に見舞われ、母屋が全壊し工場の建物は傾いた。食糧難時代に、コッペパンをつくり地元の住民全体に配給した。

 その後、現在もファンが絶えないヒット商品が誕生した。「石田カタパン」と「棒菓子」だ。いわば和製クッキーの味で、今なお、お土産や茶菓子に重宝がられている。

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