因島で見た野鳥【169】モズのはやにえ

本連載【52】モズで、モズを紹介したが、モズのはやにえ(早贄)に関連する研究の一端を紹介する。

モズは、秋口にオス、メス共に、それぞれ、縄張りを持ち、”キィー キィー…”と甲高い声で「高鳴き」し、縄張りの中に、小鳥や小ネズミなどから小さな昆虫に至るまで食べ物になりそうな獲物を尖った枝先などに突き刺して保存する。これが「はやにえ」である。

写真①は、ハナモモに突き刺されたカナヘビで、写真②は、イロハモミジの小枝に突き刺されたバッタである。バッタは、まるで生きているようにも見えるが、後脚を見ると死んでいるのがわかる。これらはモズの「はやにえ」であろう。はやにえの目的は、「獲物が少ない冬の保存食」、「枝先に固定してクチバシで切り裂いて食べやすくするため」、あるいは、「本能的に獲物を捕獲して枝先に刺しているだけ」など様々な説があるが、確かなことはよくわかっていないようである。

モズのオスは、繁殖期の2~5月ごろに、高鳴きとは違った鳴き声で、縄張りに入ったメスにアッピールし、メスが気に入ればつがいとなる。

ここでは、繁殖期を前にはやにえで栄養補給をしたオスほど、繁殖期に入ってメスを早く獲得するという研究結果を紹介する。末尾にその出典を記載している。

大阪府の里山での観測によれば、オスは、繁殖期直前までにほとんどの「はやにえ」を消費している。

14羽のモズ・オスについての、はやにえの消費量とその鳴き声のテンポとの関係が図①である。

図①「はやにえ」消費量と歌唱テンポ

これは、資料②(モズの『はやにえ』の機能をついに解明! – はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる – 大阪市立大学)にある図を改変したもので、波線は、傾向が分かりやすいように筆者が書き加えた。はやにえの消費量が多いオスは早いテンポで鳴く傾向にあることが分かる。

図②は、オスの歌唱テンポと、繁殖期(2月~5月)にオスの縄張りに入ってきたメスと「つがい」になった時期との関係で、5年間で58羽のオスについて観測した結果である。

図②歌唱テンポと「つがい」成立の時期

文献①(Y.Nishida&M.Takagi , J.Avian Biol , 2018:e01794)のFigure2を改変したもので、図中の曲線は、筆者が書き加えた。横軸はオスの歌唱テンポで、縦軸はつがい成立の時期を表す。数値は、2月1日から5月31日までの120日間を4日間毎に30当分し、2月1日から2月4日を第1期間とし、順に数えた期間を表す。例えば、「9」は、2月1日から8×4=32日経過した後の4日間を意味する。早いテンポで鳴くオスほど、早い時期につがいになるメスを獲得する傾向があることが分かる。

Y.Nisida&M.Takagiの研究により、「はやにえは、オスの場合、冬の保存食の機能だけでなく、その消費がオスの性的魅力を高める効果を持つことが、世界で初めて実証された」とのことである。結論を聞けば、「なるほど」とも思えるが、実証するには、研究者の高い知的好奇心と多大な努力が不可欠だと再認識した。モズとはやにえを眺める目線が少し変わる。

研究結果の引用を許諾して頂いた西田有佑さん(大阪市立大学)に感謝します。

文・写真 松浦興一

因島で見た野鳥【52】モズ

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