75歳老人のフーテン 2019東北の旅【81】粟島のバス

9月18日(水)⑤粟島のバス

釜谷のバス亭の前に老婆が2人座っている。それを見た運転手が焦ったように、「今日はイキイキ体操の日だったのか」と声をあげる。バス亭にバスを止め運転手は降り老婆2人と話し始める。どうも老婆2人は内浦で行われる老人健康体操に参加するつもりでバスを待っていたようである。

このバスは予約のいるチャーターバスで、定期バスではないはずだ。何故老婆2人はバスが来ることを知っているのか不思議である、しかしそこが粟島、粟島であるゆえんであろう。

おそらくバスが行くことは連絡が入っているのだ。知らぬは運転手ばかりだが、その運転手も2人の老婆を見るとイキイキ体操の日であるとわかる。のどかなものである。

運転手が降りて老婆と話していると、4~5人がどことはなく湧いてきて話に加わって輪ができる。運転手はその会話の中で大きな声で「ばば、ばば」と連発している。ここへ来る道中にも「ばば、ばば」と連発するので、私は「ばばというのはお客の中に差しさわりがある人がいますよ」と笑いながら注意するが、彼は笑って受け流して改めない。輪の中の会話を聞きながら、「ばば」という言葉はこの島では老婆を称する普通用語で老婆に対する蔑称ではなさそうだと、長野のおばさんと納得して頷きあった。

老婆二人がバスに乗ってきた。長野の女性が「お元気ですが何歳になられますか」と尋ねると「90歳と88歳」という。「畑に行っていたがイキイキ体操だと思い出し、バス亭でまっていた」という。この島では90歳も88歳もまだ現役で身の丈に応じた働き場所あるのだ。私も出来るならこうありたい。

このバスはどうも村の所有でスクールバスにもなり、定期バスにもなり、チャーターバスにもなる、この島ならではの融通の利く乗り物なのだろう。運転手は村役場の嘱託の運転手ではないかと思う。そして彼は「この後も次の事が入っている、忙しいのだ」と言っている。この島では何でも活用する、縦割り行政が許されない風土である。

バスは釜谷でUターンして山の中の道を進み、山を越え内浦に戻り終点に着く。老婆二人は町の中に消えてゆく。おそらくそこにイキイキ体操をする老人集会所のようなものがあるのだろう。

私たち4人は早いのだが食堂に入って昼食をとる。その後はどういうわけか長野の3人と別れて単独行動になっていた。

田中伸幸(因島田熊町)

新潟県粟島のバス

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