ふるさとの史跡をたずねて【162】山四国八十八ケ所(因島三庄町)

山四国八十八ケ所(因島三庄町)

何かいいことをすると、それを見た人が真似をする。このようにして漁業や農業の技術は広まり、近代になって工業も広まった。同じようなことが精神的な分野でも起こり、お宮が勧請されて祭りが真似られ、地域の実情に応じて変わってきた。かくして文明・文化は発展し、物心両面で人びとの暮らしを豊かにしてきた。島内の各地に四国八十八ケ所があるのも、この流れから考えれば特別珍しいことではない。

しかし、八十八個も札所を作るということは、簡単なことではない。周到な計画と熱意がなければできない。いや熱意だけではなく経費もかかることである。そして、できたらできたで守っていかないと、いつしか忘れられたり、壊れたりする。
土生町と三庄町の境界をなす山稜は、これまでに何度か取り上げた。北よりの西側が因島村上氏第二家老の稲井氏の居住地であった。江戸時代土生村の庄屋を勤めた大土生宮地家の屋敷跡が本宅、對潮院が別邸だった。山頂を小丸城跡と呼んでいる。本宅と小丸城跡の間に宝地谷があって、多数の一石五輪塔などが往時の繁栄を偲ばせる。そこから山頂を目指して登ると、途中に論師石(どんじいし)があった。さらに三庄町へ下るように峠道は続く。

その峠道の一つに沿って、立派な石堂がいくつかあり、四国八十八ケ所のミニチュア版だと一目でわかる。これらは三庄町明徳寺前の寺谷公園から始まる、山四国八十八ケ所である。一部番号順でないものもあるが、これは長い歴史の中で何度か崩れたりしたせいであろう。それにしても、これだけ揃っているのは、設置した場所が良かったという面も忘れてはなるまい。山の高さも適当であった。例えば、観音山とも呼ばれる因島最高峰の奥山には、複数の西国三十三観音があるが、維持するのにも大変だったと思う。信仰心、生活習慣が変わったのであるから設置場所のことまで現代の感覚で議論しても意味はなく、結果論に過ぎないが…。

現在では自然災害に加えて、イノシシの被害も考えなければならない。妙案とてないが、かなりの重量のある石であるだけに、一度壊れると修理するのが大変である。

(写真・文 柏原林造)

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