時代的背景を紡ぐ 本因坊秀策書簡【48】囲碁十訣と孫子の兵法

 「逢危須棄(危うきに逢わば、すべからく棄つべし)」―君子危うきに近寄らずということわざがありますが、危険はいつどこからやってくるか分からないものです。君子は危うきに居らず、賢人は危うきを見ず、聖人は危うきに寄らず、とも言いますが、虎穴に入らずんば虎子を得ずという反対の言葉もあります。盤上で「死んだら動くな」という格言は、一度は死んだ振りをしていた石が、後になって働いてくれることがあるものです。全体が危険にさらされる場合は小さな石を捨てて本体を助けよ、という教えですが、判断と後の処理が肝要。


 「慎勿軽速(慎みて軽速なるなかれ)」―軽い手・速い手という表現は、碁・将棋については良い意味で使われます。本因坊秀策も、どちらかというと速碁だったと伝えられています。
 ところが「囲碁十訣」に書かれている「軽速」は否定的な意味あいで、打つ人の精神的な面を忠告しています。うっかりミスや早合点のポカミスに気をつけなさいという戒めです。そんなことは誰もが分っていることですが誰もが経験しているはずです。プロの碁でも単純な小ミスから大ポカがあり観戦記のネタになっています。力余って転ぶこともあるでしょうが「ポカも芸のうち」といった人もいます。どうしたらポカが出ないかを問い詰められると難問です。あまり慎重に考えすぎて疲れてミスをすることもあります。どういう時にポカが出やすいか個人差があるようです。
 「動復相応(動けば、すべからくあい応ずべし)」―初心者は相手が打った石の周辺ばかり気をとられ、いちいち対応するうちにいつの間にか盤面の模様が劣勢に変ってきます。これは「すべからく相応ずべし」の金言にそっていないからです。この金言は一般社会的に理解すれば、相手が動けば、こちらも応じて対処しなければならない。相手が笑えばこちらも笑顔を返す―といった普通の人間関係です。ところが碁は勝ち負けを争う競技。素直に対応していては勝機はありません。だから、この金言は相手の意図を読みとり、それを上回る工夫をして応ずべし―というわけです。
 「彼強自保(彼強ければ自ら保て)」―囲碁の対局中どこが「寒い(薄い)か」「暑い(厚い)か」という判断が問われます。ともあれ、相手と自分の力関係を物理的に石の数から何となく感じるだけでも役に立つものです。それが強い人同士だと、石と石の穏にかくれている力関係を読みとっているから石の数だけでは見分けられないものです。相手の石が強いところは、こちらも手厚く、弱い石を補強、寒ければ服を着なさいということでしょう。(庚午一生)

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