時代的背景を紡ぐ 本因坊秀策書簡【47】囲碁十訣と孫子の兵法

 「入界宜緩(界に入りては、よろしくかんなるべし)」―ここでいう界は、相手の勢力範囲圏内で、敵陣の勢力圏へ打ちこむ時は穏やかな手を選ぶのが肝要。奇襲戦法で敵陣の界へ飛び込むのはつつしみなさいという戒めで被害を最小限に抑えつつ、成果が少なくても満足して「よろしく程を知る」ということのようです。


 「攻彼顧我(彼を攻めるには、我を顧みよ)」―個人差はあるが、勝負ごとは守るより攻めるほうが勢いがあって面白い。だが攻められている方からすれば反撃のチャンスを虎視眈々と狙っている。攻めている方に少しでも弱みがあれば逆転に転ずることがある。自分の足元をよく見ていないと破綻をきたすという戒め。1980年代のバブル経済を招いた経営破綻もその例。
 「棄子争先(しをすてて先を争え)」―子とは石のことで、碁石は1個、2個といわず1子、2子…と数えます。利かした石や捨て石は未練がましくこだわらず先に進む。部分的な利益より全局的な優先順位を判断しなさい―という教えです。戦術といった方が正しいかもしれません。その石が他の局面より小さいか大きいかの判断も必要ですし、捨てるからにはあとの手がなければ何にもなりません。その着点がどこかを常に見とどけていないと「先」は争えません。この金言は実践になると難しいものです。うっかりして取られそうになった石ができてしまった時に「棄子争先」と唱えれば良い―という説もあります。取られるのでなく、捨てる判断も必要で少し損をしても別のところで挽回を試みる「碁盤は広い」というわけでしょう。
 「捨子就大(小を捨てて大に就け)」―前項の「棄子争先」と同じ内容だが「石」でなく「地盤」のことだと思えば分かりやすいという解釈が当たっていると思います。もともと碁は大きいと思われるところから順番に打つのが基本とされています。政界再編が始まると「小異を捨てて大同につく」と称して新派閥や新党ができたりします。それと似ていて、小さい所にこだわらず、大きいところへ目をつけるべきだとごく当たり前のことをいっているわけです。だが、実社会では、何が大で、何が小か個人差があります。経済的な余裕か、平穏な暮らしか。趣味か仕事か、家庭をとるか。いずれもほどほどがよいのか。人それぞれで損得計算だけでは判断できないことが多いようですが、それが人間的な魅力として面白いという人もいます。ところで碁は1目でも多ければ勝ちで盤上では地の大小が損得勘定になるわけですが、どこが小か、どこが大か、大小が連携しているので一口にいえないのが碁芸の深さではないでしょうか。
(庚午一生)

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