「今晩は」半年ぶりに来し男孫声変りして言葉少なし

橋本喜代子
 ある夜、「今晩は」と言って少年Aが作者を訪ねました。おばあちゃん子だった少年Aは、自分でも扱いかねている伸び盛りの体を壁際に寄せて座りました。


「前みたいに遊びに来んさいよ」
「うん、来る―――」
「まだ駆っこしてるんか」
「―――」
「してるならしてる。してなきゃしてないと言わんと分らんじゃァないの」
「―――」
「急に大きゅうなったと思う間もなく無口になって」
 おばあちゃんのひとりごとは唱歌「汽車」の曲に変り、少年Aはそんなおばあちゃんが好きでした。
 その間、少年Aの脳は片時も休みません。

  1. 陸上は卒業するまで続けると言ったじゃないか。
  2. 近頃なぜかB子が眩しくなったなァ。
  3. 人工衛星から紙飛行機を飛ばすのも面白いが、子供っぽいかなァ。
  4. おばあちゃんはよく喋るが脳と発声機構はどう繋がっているのだろうか。

 少年Aの空想が回転を早めていくのを見たおばあちゃんは、手に竹の物差を持って少年Aに近づき、その肩を「エイ」と打ちました。
 その瞬間少年Aは「決めた。紙飛行機だ」と叫びました。少年Aが帰った後、おばあちゃんは「紙飛行機もよいけど…」と呟きました。
 その頃、少年Aは親友Aに宇宙紙飛行機の操縦術を熱弁し、親友Bに宇宙紙飛行機の目的を粗削りに語り、こうした問答で得た疑問から宇宙紙飛行機のイメージを絵にしていました。
(文・平山雅信)

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