続・井伏鱒二と因島【4】その作品に表現された「因島」

また、1957(昭和32)年6月30日発行の『還暦の鯉』に収録された『三味線唄』には「岡本のお婆さん」が出てくる。

それから数年後、私は療養の目的で瀬戸内海の因ノ島に行き、土井医院の二階に六ヶ月ばかり止宿した。この医院のお婆さんは私の無聊を気の毒がつた。「つれづれでせうから、歌を習つたらどうですか。」お婆さんはそういつて、近所の岡本さんといふ家のお婆さんのところへ私を連れて行つてくれた。当時、岡本さんのお婆さんは八十歳あまりであつた。江戸の生れで、上野の彰義隊の乱のときには腰に弁当包みを結びつけて郊外に逃げ出した。そのとき十六歳であつたといつてゐた。ずつと中年のころまで東京に住んでゐたといふことで、「お前さん、若いとき勉強しておかなくつちやいけないね」といつた工合に東京弁をつかつてゐた。それはいいが、老齢で耳が遠いから、三味線の調子を甲高くして歌ふ声は呟くごとく低かつた。しかも私に教へた唄は「梅にも春」一つだけであつた。不思議と私にはこの唄に縁がある。

『三味線唄』(新全集第19巻486~7頁)

(石田博彦)

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土井医院2階より百貫島を見る

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