村上水軍の「軍楽」の研究【2】

掲載号 13年09月28日号

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前述の通り、水軍の軍楽についての音楽学的研究はほぼ皆無と言ってよい。他の分野においてもその研究はされていない。しかし水軍についての歴史学的研究はあり、山内譲の『瀬戸内の海賊――村上武吉の戦い』(2005)が挙げられる。また、江戸時代に森重都由が村上水軍の兵法書を編さんしたと言われている『合武三島流船戦要法』(伊井春樹訳 1979)には、太鼓、法螺貝、鐘についての記述が見られる。また、陸の戦における軍楽については宮崎まゆみ「陣太鼓考――伝蒲生氏郷所用陣太鼓をめぐって」(2002)がある。

しかし、これらの先行研究はいずれも村上水軍の軍楽に焦点をあてているわけではない。そこで本論文では、村上水軍の兵法書『三島流水学軍用集並同抄』における軍楽についての記述と記譜を基にして、先行研究を参考に、その軍楽について言及してみたい。また、兵法書の翻刻内容と、『合武三島流船戦要法』のような他の史料との比較もしたい。

先行研究

本論文において中心となるのは、兵法書『三島流水学軍用集並同抄』である。この兵法書のうち、鯨波幷勝凱之事、大皷之事、貝之事、鐘之事の四か所の翻刻を行った。それと他の史料との比較をすることで、その内容について考察する。

また、瀬戸内でフィールドワークをした際に因島在住の方で村上水軍の兵法書と言われている史料を持っている方がいらっしゃり、そのコピーを頂くことができた。そこにも戦で使用していた音具についての記述があり、史料比較の際に使用する。軍楽史の考察においては、海に限らず陸においても、軍楽がどのように戦の中で扱われていたのかを考察する。

しかし、軍楽というテーマでまとめられたものは存在しないため、宮崎まゆみ「陣太鼓考――伝蒲生氏郷所用陣太鼓をめぐって」(2002)を参考にして原典史料にあたり、おおまかな「軍楽」史をまとめた。

研究方法

第一章では、村上水軍の歴史と兵法書の成立について述べる。

第二章では、海に限らず陸も含め、軍楽が時代と共にどのように変化していったのかを、史料を基にして考察する。

第三章では、村上水軍の兵法書である『三島流水学軍用集並同抄』の翻刻内容についてまとめ、また考察を行う。

第四章では『三島流水学軍用集並同抄』と他の史料との比較を基に、その詳細について考察する。

そして最後に、水軍の軍楽がどのようなものであったのか、またどのような目的で使用されていたのかをまとめる。

神戸大学国際文化学研究科 山本詩乃

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