消えた因島のアサリ 里海(さとうみ)再生は始まる

掲載号 08年04月26日号

前の記事:“日中友好条約30周年 平山郁夫芸術展・北京 地元から見学の旅行団
次の記事: “青木昌彦著「私の履歴書」4月24日発行 日経出版社

 因島周辺の浜辺からアサリの姿が消えた。水ぬるむ3月から5月のゴールデンウィークにかけての大汐の干潮時には砂浜や沖の洲で潮干狩りを愉しむ風景が見られたが、いつの日か遠い昔の残映としてなごりをとどめるようになった。

 行政や漁協が幾度となく稚貝を放流して増殖に挑戦したが成果がない。あきらめかかったところへ福山大学生命工学部海洋生物科学科の教授が「このままではくやしいではないか」と、因島漁協、稚貝放流海域の大浜町民の協力を呼びかけ昨年5月に漁協から提供されたアサリの稚貝27万個(約0.9トン)を放流。禁漁期間を設け8月に解禁した。

 同大学生の卒業研究テーマにもなり産学官民のプロジェクトチームができ上がったが、一度絶滅に瀕した動植物を再生させるには長い年月が必要だ。今年はアサリが産卵する3月ごろの生態の調査を計画したが稚貝の高値で見送り。5月中には放流、二汐(4週間)すればかなり成長するが「里海(さとうみ)」再生は始まったばかりである。

関連書籍

E