因島で見た野鳥【163】種内托卵

前回【162】は、自分の巣を持たず、異種の鳥の巣に卵を産み、巣の持ち主に巣立ちさせる、いわゆる種間托卵(真性托卵)を紹介した。今回は、自ら営巣・育雛をする鳥が、同種の別個体の巣にも産卵し育雛をさせる、いわゆる、種内托卵の話である。

同種の鳥でも雌雄の識別が難しい場合も多く、メス親の違いによる卵・ヒナの識別はさらに困難であることもあり、種内托卵の研究は種間托卵に比べ少なかったようである。近年では、DNAなどの解析から親子関係を明らにすることができ、種内托卵の研究も進んでいる。種内托卵の目的は、育雛の負担を下げることと、捕食されるリスクの分散であろう。

本連載でも、【42】バン【57】ムクドリで種内托卵を紹介したが、現在、少なくとも、16目234種で種内托卵が確認されている(フランク・B・ギル:鳥類学、第3版)。

因島では確認していないが、バン、オオバンの種内托卵は、しばしば観測されている。参考までに、因島では留鳥のバンと冬鳥のオオバンが、たまたま、一緒に写っている様子を写真①に示す。

写真①バン(手前)とオオバン(奥)

遅く生まれたバンの幼鳥が、冬を越して翌春も親鳥の縄張りに留まり、親鳥の巣に産卵し、母娘で抱卵育雛するケースもある。

アメリカオオバンの例では、観測した巣の41%に他のアメリカオオバン・メスが産んだ卵があり、卵の総数の13%は托卵された卵であった。異なった色模様などで托卵された卵と気付いたときは、巣材の中にその卵を埋め込み、孵化させないこともある(前出の「鳥類学」)。自分の卵の特徴を明瞭にして識別を容易にすると、自分が托卵したときにも気づかれやすいことになるので、自分の卵の特徴は程々にしなければならない。

ガン・カモのヒナは、一斉に孵化し、母鳥に連れられて巣を離れて(早成性かつ離巣性)、集団で餌場に行く。一般に、卵が大きいほど孵化する期間が長い。コクガンが托卵するときは、自分の卵と同じ大きさの卵があるコクガンの巣に托卵する。小さすぎると孵化が早すぎて飢え死にし、大きすぎると孵化が遅れ卵のまま置き去りにされる可能性がある(植田睦之:バードリサーチ野鳥の不思議解明最前線2011)。

斎藤隆史(つくば生物ジャーナル2、130-131、2003)は、200個近い巣箱を設置し、ムクドリの利用状況を観察した結果より、巣箱を占有できない個体が托卵することが多いと結論している。

因島で見るコシアカツバメ(本連載2)によく似たサンショクツバメは、巣で産卵した自分の卵を口にくわえ近くの巣に放り込む(植田恵介:♂♀の話 鳥、技法堂出版、1993)。

飛べないダチョウは開けた平らな場所に営巣する。そこは、卵を狙うハイエナやジャッカルなどがいるところでもある。何羽かのメスが互いの巣に卵を産み込む。自分の巣が捕食者に襲われても他の巣に産んだ自分の卵は助かるかもしれない。ダチョウが抱卵できるのは最大20個程度だが、30個以上になるまで卵を集め、20個程度を巣の中心部に置き、残りを巣の縁に配置し、捕食者が来たら中心部の卵だけを守る。そこには自分の卵もいくつかはあるはずである(M・ブライト、丸武志訳:鳥の生活、平凡社、1997)。

数種の托卵の様子を断片的に紹介した。種内托卵は、子孫を残そうとする戦略の一つであり、種間托卵への進化の第一歩である(前出「鳥類学」)。

写真・文 松浦興一

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