75歳老人のフーテン 2019東北の旅【63】丸一旅館の話

9月16日⑥丸一旅館の話

「吉田や」前の道路を挟んだ向かい側に2階建てのくたびれた小さなビルがある。その表に「いりえ」と「佐代」という看板を出したいかにも暇そうな2軒のスナックがある=写真

――丸一旅館の家族の話をさせていただきます。家族は主人夫婦とお婆ちゃんと東京の女子大に行っている娘の4人家族でした。

まず主人、この人は年の頃は50代であったが、旅館の仕事はほとんどしないというのが評判の人でした。何であったか忘れたが自分の趣味にはまっていたと言われていた。対外的に旅館組合の会合などには出ていたようだが、旅館の仕事をする姿は見る事は無かった。しかしよくある旅館の主人の女遊びに夢中になるとか芸者を囲うとかいうような噂もない人でした。

それでは丸一旅館は誰が仕切っていたかと言うと高齢のお婆ちゃんが頑張っていた。だから私達はお婆ちゃんの指揮の下に仕事をしていた。

主人の奥さんは全く地味な人で旅館の女将という適性は無く、お婆ちゃんの指導の下唯々働くといった印象の人でした。

お婆ちゃんは孫娘に期待をかけていたようで、よく旅館の仕事を手伝わしていた。

孫娘も頑張ってそれなりにこなしているように見受けられた。しかし時々私達の所に来て、旅館の仕事は嫌いだとぼやいていた。

彼女の事で少し気になったのは、夏休みで帰省しているのに友人が彼女の元を訪れる事がほとんど無かったことである。

そして彼女は今東京で農林省のアルバイトをしているから、その辺に来る事があるなら覗いてくださいと言っていた。

今になって思い返すと変な家族であった。そして当時から旅館の経営は難しくなっていた節があったようだ。例えば大きな建物だが老朽した箇所の補修・庭の手入れなど十分な物では無かった節がある。間近に迫ったおばあちゃんの引退や瀬波温泉の衰退などが原因で倒産にいたったものと想像される。

明日は日本海の孤島粟島に行く予定である。私の島フェチぶりは日本海に及ぶのだ。粟島人口350人の島、宿がなければ悲惨なことだと、粟島観光案内所に電話をかけて宿の予約を依頼する。すぐに返事が返ってきて民宿じんきちに予約がとれた。「吉田や」は本格的な温泉旅館、そこの御馳走をいただき、くつろいで酒を飲む。瀬波温泉の夜は静かなものでぐっすりと眠られた。

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